入学式が終わって講堂から出る。
相変わらず、遠巻きにされているのがわかる。
いったい俺が何をしたっていうんだ。くそ、あいつに関わったばっかりに。
ぎりぎりと歯ぎしりでもしたい気持ちになったが、ここでそれをするとさらに引かれることは明白だ。ぐっとこらえる。
今日は本当に入学式のみでオリエンテーションとかシラバス説明とかについては、明日やるらしい。
今日届くはずのベッドを受け取らないといけない。
まあ、友達は適当なサークルにでも入ってその中で作ればいい、そう思って帰ろうとしていると肩を掴まれた。
「ああ、探しましたよ。入学式終わったなら教えてくださいよ。」
また、こいつか。っつーか、携帯番号知らないだろ。どうやって教えるんだよ。
いや絶対、携帯番号交換なんてしないからな。うん。
「何か用か?っつーか、今日はもう絶対に泊めないからな。」
「周りに人が居るのに、お泊りの話をするなんて大胆ですね。」
は!?今こいつ何ていった。
何 て 言 っ た。
周りにいたやつらが、ああやっぱりと言う感じでこちらをちらちら見ながら話し始める。やられた。完全にこのくそ馬鹿野郎のペースだ。
「ああ、それより、時間が無いので、早く行きましょう。」
「は?どこにだ。」
「昨日のお約束の件ですよ。」
ニッコリとイケメンスマイルをかましながら、手をひかれる。
だからそういうことは女の前でやれよ。
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とある、研究室の前へ連れて行かれた。
すると、佐々木はノックもせずドアを開けて俺の手を引いたまま入って行った。
「高梨さん、いますかー?」
気軽な感じでずかずかと奥に入っていく、佐々木。
奥から、スーツを着た、60歳くらいの男性が出てきた。
高梨教授だ。
一度あったことがあるし、いつもじいちゃんが、雑誌に載った写真とかを見せてくれていたので間違いない。
「ささ君か、どうしました?」
「ああ、もう行く支度していたんですね。間に合ってよかった。」
と言いながら、佐々木が俺の背中をスッとおして前に進ませる。
「えっと、これ俺の恋人の山中 智史君。ずっと一緒に居たいので、このゼミに入れます。普通ゼミは3年からだけどプレゼミ生扱いでよろしくお願いします。」
こいつ不穏なことさらっと言いやがった。
「誰が、恋人だ。あ゛?なに、てめえ、何また捏造設定垂れ流してるんだ、こらあ!?」
入学式前後で色々と精神的に削られていた所為で、つい突っ込んでしまった。
はっ、と気づいて、高梨教授の方を見る。
くすくすと笑っている高梨教授は、いやあ仲がいいんだねえと見当違いの事を言っている。
いや、昨日知り合ったばかりですから。