同居しますか9

恋人等と言う、捏造甚だしい発言をされ、本当にこいつ頭おかしいんじゃね?という気持ちを新たにする。
高梨教授と仲がよさそうに話しているということは彼の研究室に居るという、この馬鹿の発言は嘘ではなかったという事だと思う。

高梨教授にぺこりと頭を下げる。
高梨教授は俺の顔をまじまじと見た後

「あれ?山中さんのお葬式でお会いしましたね。確かお孫さんだとお聞きしたような……。」

と言われた。
ああ、覚えていたんだ、そう思い自己紹介をする。

「山中滋の孫で、山中智史と言います。祖父の告別式にはわざわざお越しいただいてありがとうございました。祖父も喜んでいたと思います。」

もう一度頭を下げながらお礼を言う。
高梨教授はあの時は慌ただしく帰ってしまってと謝るように言われ慌てて首を振りとんでもないと返した。

「君は、植物学を専攻しているんじゃないのかね?」

そう、高梨教授に聞かれ緩く首を振る。
俺の祖父は植物学者であったが、学説を学会で否定され、以降周りから異端視され孤立していった。
学会追放等と言うものは現実世界に存在しないが、まるで空気のように研究結果を無視され続ける苦痛に耐えかねて、祖父はあの家でたった一人で研究を続ける様になった。家の書斎と蔵には、研究レポート等が所狭しと並んでいる。
小さいころから祖父さん子だった俺はあの家で祖父の研究を見せてもらったり、もう少し大きくなったら、祖父の論文を読ませてもらったりしていた。
高梨教授とは専門分野の違いもあってか、学会から祖父が遠のいても親交があったようで、サイエンス誌を俺に見せては、いかに彼がすごいのかを教えてくれた。
そういうこともあって、俺は祖父が学者として尊敬していた高梨教授の教えを請いたいということでこの大学に通っている。
それから、もしかしたら祖父の理論が生物学からのアプローチで証明できるのではないか、そんな期待も、まったくないかと言ったら嘘になるが。

「山中滋さんですか?あの、『植物感情論』を発表した方ですよね。」

馬鹿もとい、佐々木が満面の笑みで言う。馬鹿にされたと思い、睨みつけるが、両手を掴まれ握手するように上下しながら握られる。

「是非、是非、研究資料を拝見させてください。」

満面の笑顔で言われ、思わず「は?」と返してしまった。

「ささ君、山中さんの論文『すごく、斬新でいい着眼点だ』っていってたもんねえ。
っと、まずい、そろそろ出ないといけない時間だ。山中君、僕のところはいつでも来ていいから。今度はゆっくり話をしよう。」

そう言って慌ただしく、高梨教授は出て行った。

残された、俺と佐々木。
祖父の周りからの評価はイカレテいるそういうものが多かったため、褒められたのがこいつでも正直うれしい。
普通、学会などに発表していない資料を外部に見せることはしてはならないことだろう。けれど、祖父はすでに他界しているし。そもそも、学会に無視され続けた結果が今の現状だ。
それに、家の維持管理に、あの膨大な資料の管理も含まれている。
あの、論文や、資料をどうするのかは一応俺に委ねられているということだ。

だから、こいつが変態だということも忘れて、つい言ってしまった。

「これから、家に見にくるか?」