「ホント、お前チョコ味のもの好きだよな。」
バリバリと板チョコを食べる中城をみながらぼんやりと手に持っているスマホの画面に視線を戻す。
特にすごく好きという訳でもないソシャゲの画面が移っているがなんだか面倒になってしまって、ゲームを終了してポケットに戻す。
大学はもう休みに入ってしまったし、二人とも実家への帰省は3月中を予定していた。
バイトも今日は入っていないし、ただひたすら時間を怠惰にすごせる瞬間だ。
「チョコレートは常に二桁は備蓄してあるからなあ。
……お前も食うか?」
あまり甘いものは好きではない。
それは中城も知っているはずで、聞く声もやる気がない。
「いる訳がないだろ。」
「そうかー、美味いんだけどなあ。」
中城は全く気にしないで俺の横で残っているチョコレートを口に放り込んだ。
それから、それをゆっくりと噛み砕いて飲み込んだ。
他にすることもないので、それをぼんやりと眺めていると、中城の表情が一瞬思惑を浮かべる。
けれど次の瞬間には、彼の顔がこちらに近づいてきて唇が触れ合う。
ぬるりと入ってきた舌はまだチョコレートの味がした。
触れ合った部分を離れた後、中城は悪戯が成功した時の様に笑った。
「あめえ。」
口の中が甘くなってしまっている。
「でも、嫌いじゃないだろ?」
それがチョコレートの事なのか、それともキスの事なのかで答えが違ってくる事くらい、中城は知っているはずだ。
「まあな。」
肯定しきれない気持ちでそう返すと、仕返しという気持ちで今度は中城の唇に自分から触れる。
すぐにチョコレートの匂いで頭がクラクラしてしまったけれど、まあそれも悪くないと思えた。
了