深夜何もないのに目が覚めた。
特に怖い夢を見た訳でも、寒かった訳でもない。
多分、大地さんが身じろぎをしたときに、糸が引っ張られたのだろう。
そっと起き上がると横に眠っている大地さんを見下ろす。
キルティングの布団は、温かく、広めのベッドは朝起きるのが嫌になる位だ。
けれど、それよりも何よりも、隣で眠る人の存在がとてもとても――。
「愛してます、よ……。」
ぽつりと気持ちがあふれた。
けれど、自分で声に出してしまって少しばかり恥ずかしくなる。
前に、こうやって朝方糸を撫でているところを大地さんに見つかってしまったことがあった。
あの時の居た堪れなさっていったらない。
だけど、それでもぽつり、ぽつりとあふれてくる言葉を寝ている大地さんに投げかける。
「ほんと幸せだ……。」
「好きです。」
「幸せすぎて、死んでしまいそうです。」
そう呟いたところで、空気がゆれる。
「俺もだよ。」
返ってくる筈の無い声に驚いて隣の枕元を見る。
大地さんが嬉しそうに目を細め、微笑んでいた。
聞かれていたことに気がついて、どうしたらいいのか分からなくなる。
「起きていたんですか?」
「俊介が起きたからね。」
さすがに起き上がれば気が付くよと彼は言った。
随分前のあの日にも似た様なやり取りをした気がする。
けれど、とにかく今は、深夜の独り言を聞かれてしまった事の方に思考の大半を取られてしまう。
「俺も、幸せだよ。」
起き抜けとは思えないはっきりした口調で、大地さんはそう言った。
「それなら、俺も嬉しいです。」
なんだか、毒気が抜かれた様な気分になって素直にそう答えられた。
大地さんは、ふふっと嬉しそうに笑うと「まだ、起きるべき時間までに何時間もあるから、寝なおそう。」と言う。
俺も横になると、そっと手を握りしめられた。
二人で笑い合って、それからまた、すぐに眠くなってしまった。
手を握ったまま目を閉じると大地さんに「おやすみ」と言われた声がうっすらと聞こえて、もう一度、ああ幸せだと思った。
了