告白

「俺、あなたのことが好きです。」

山田はKOUのファンだと言っていたし、事あるごとに俺の作ったコスプレ衣装のここが好きだ。あそこが好きだと言っていた。
だから今回もそういうやつだと、聞き流そうとした。

視線を逸らそうとした瞬間。まるでそれが分かっているみたいに山田は「恋愛的な意味ですよ」と付け加えた。
まるで俺が無かった事にするつもりの事を分かっているみたいな口ぶりだった。

「おれは、コスプレしてるときみたいに綺麗な人間じゃないぞ」
「知ってますよ」

そう言いながら山田が俺の写真を撮る。
写真を撮ることが好きなことは知っていた。

だから、コスプレをしている時も、そうでないときも、カメラを向けられることにはもう慣れてしまった。

そのカメラの向こう側で、熱のこもった視線にはほんの少しだけ気が付いていた。
気が付かないふりをしていた。

まるで考えないようにしていたし、多分山田も俺に言うつもりは無いんだろうなと思っていた。

実際の俺は陰気なオタクだし、文句ばかりが口をつくし、見た目も可もなく不可もなく。
山田とは正反対のタイプだ。

「コスプレしている時の、まるで人間じゃないみたいに綺麗なあなたも好きだし、普段の気の抜けてるところも好きですよ」

迷いの無い言葉が伝わる。
化粧をしていればよかったと思う。
あれでかなり顔の血色を隠せたのに、今は何もしていないから多分色々ダダもれな気がする。

「俺、お前との関係を考え直す気無いぞ」

内心の焦りと反対に言葉は淡々と響く。
本心だから、迷いはない。

「今の関係が心地いいから、それ、替えるつもりないよ」

山田は一瞬大きく息を吸って吐いて、それから「分かってますよ」と答えた。

まるでさっきまでの雰囲気が何も無かったかの様に、そう答えた山田は普通に、衣装の縫い方の話を始める。

今までと同じでいいのか。
安心しなかったと言えば嘘になる。だけど、少しだけ心に引っかかるものの意味をあまり考えたくは無かった。

ひたすらBGMの様に流れるミシンの音を聞きながら、もう一度今の関係が一番心地いいと思い直した。

その位、山田との時間は自然で、楽しくて、それで安心できた。
だから変化なんて必要ないのだと思った。