シュートの成功率が上がったらしい武藤に付きまとわれてもう一週間になる。
昼飯時に付きまとわれるようになって、面倒で教室を離れて特別教室のある校舎の屋上へ向かう階段に座って一人で弁当を開ける。
まだ、春先で鉄筋建ての校舎の階段は割と涼しい。
出来れば足を冷やしたくは無かったのだが仕方が無い。
埃っぽいのも気にしてもしょうがない。
諦めることは割と上手いのだ。
それなのに、肩で息をした武藤が目の前に現われて思わずため息をつく。
「ネットでプロチームの試合でも見た方が早いだろ。」
体系も違いすぎるのに俺のもうまともに飛べるはずもないフォームを見ても殆ど意味がないだろう。
「俺、プロとか見たことねーし。」
「は!?じゃあ、なんでバスケとかやってるんだよ。」
「なんでって、授業でやって楽しかったし、部活の中でどれ選ぶってなった時に面白そうなもん選んだってだけだろ、普通。」
そんなもん、だろうか。
最初は俺も似たようなもんで小学生の習い事でミニバスケをやっていたからだったけれど、上手くなりたいと思ってからは見られるプロのプレイは片っ端から見たし、中学の部活で強豪校と呼ばれる学校の試合映像を見る時間はとられていた。
「まず、お前はきちんとバスケについて知るべきだろ……。」
俺が言うと、武藤は笑った。
明らかに馬鹿にしたつもりだったのに、あいつは笑った。
「なあ、お前んち試合のDVDとかねーの?」
「は? アンタ厚かましいな。」
勝手に横に座った武藤にいわれ思わず返す。
ごそごそと袋からパンを出して食べ始めた武藤に気にした様子は無い。
「今度の日曜日、俺んちでよければ一緒に見るか?」
怪我をしてから誰かとバスケを見るのは初めてだった。
それどころか、バスケをしていた事を話したのもこいつが初めてだった。
「学校で待ち合わせでいいか? 楽しみだな!」
本当に楽しみそうに言われて、不覚にも自分も少しだけ楽しみに思ってしまった。