愛情給餌

※嘔吐ネタ

鳥は求愛行動で吐くらしい。
蹲って吐き散らしている小鳥を見下ろしながら、発情期は定期的でないと体に悪いのではないかと思う。

手も顔中も吐瀉物まみれにした小鳥を見てそっと、頭をなでる。
発情期に過度触るのは良くないと聞いた気もするがそれでもぽろぽろと涙をこぼす小鳥をみて撫でてやらねばと手をのばした。

「せ……んせい……。」

小鳥が声を上げた。
それから吐き戻しで汚れた手を浴衣の袖でゴシゴシと拭いていた。

ゆかた?
何故突然、そんなことが思い浮かんだのかは分からなかった。

目の前にいるのは小鳥だ。
小鳥と浴衣が結びつくはずが無いのに、私は一体何を考えているのだろう。

疲れているのだろうか。

それよりも小鳥を綺麗にしなくてはいけない。
私がもし疲れていたとしても、飼い主としての義務はあるのだ。

慌てて、洗面所へ向かい、それからタオルを濡らして小鳥の元へ戻る。
そっと顔を拭いてやると、小鳥はこちらをじっと見る。

その瞳がゆれた気がしたが、恐らく気のせいだろう。

体温は高くないし、病気ではなさそうだ。
やはり単なる吐き戻しだろう。

吐いたものに血が混ざっている訳でも無く、ほっとしながら汚れた床を拭った。

「俺がやりますから!」

小鳥が何かを言いながら私の肩に触れる。指先が少し冷たい。

「飼い主を番(つがい)と勘違いすることは鳥ではよくあるらしいから。」

誰に聞かせるでもない、独り言がもれる。
小鳥に通じたのだろうか、小鳥は一歩、二歩後ずさった後、再び蹲った。

小鳥はとてもナイーブでデリケートらしい。

「バルコニーに行こうか。そこで歌を聞かせてくれないかい?」

私が声をかけると、恐る恐るといった具合に顔を上げて、頷いた。
汚れてしまったタオルを片付けるとすでに小鳥はバルコニーに向かった様で、慌ててそちらへ向かった。

淡い日差しが差し込むバルコニーで小鳥は風を受けていた。
私を見ると困ったように笑う。

何を困っているのか分からず首をすくめると、久しぶりに歌ってくれた。
ああ、やはり私の小鳥の歌声が一番素晴らしい。

飼い主として誇らしく思っていると、また小鳥の目から涙がこぼれ落ちた。