小鳥よ小鳥

私は小鳥を飼っている。
それはそれは大切に愛しんでいるのだ。

小鳥は臆病な生き物だ。
犬の様に散歩をさせるのはストレスになる。

家から出さず、私以外の目には触れさせず。

それが私にとっての幸せだし、小鳥にとっても幸せだと信じている。

小鳥は最近歌わなくなった。
以前は美しい声で歌っていたのに、歌わない。

健康管理は万全を期している。

それなのに、小鳥は歌わない。

小鳥に声をかけるが反応は薄い。
毛艶はいいのだ。
といっても、小鳥に毛艶という言い方はおかしいのかもしれない。

「小鳥、こっちへおいで。」

リビングのソファーに座り小鳥を呼んだ。
小鳥は、一瞬びくりとした後、こちらに来た。

大きな声を出しすぎてしまっただろうか。
安心させるように頭をそれから体を撫でる。

小鳥はおとなしくしている。

ふと見ると、爪が伸びていることに気が付く。

「爪伸びてきたねえ。切ろうか。」
「っ……!」

小鳥が体を固くする。
頭の良い小鳥が、爪という単語に反応した。

「ここで、お利巧に待っているんだよ。」

そう、小鳥に声をかけ、道具を取りに行く。
直ぐに戻ると、ソファーの端で小鳥がこちらを見ている。

「さあ、始めようか。」

一本一本処理をしていく毎に、小鳥が甲高い声を上げる。
愛玩動物というのは得てして、爪切りが苦手だ。

漸く、すべて処理が終わったが細かく震える上に、時々逃げ出そうとするので血が出てしまった。
手早く消毒して。その箇所に包帯を巻いた。

私を、見上げた瞳がまるで泣いているようで。
小鳥への愛情を一層深めた。