※視点変更
今時決闘なんて、と申し込んだ馬鹿の名前は見覚えがある様な無い様なものだった。
少なくとも何か因縁があるという名前ではない。
なのに、どこかで聞いたことがある気がするのだ。
凡庸な顔だ。確認をすると彼は平民出身だという。
けれど、特待生になれるほどの実力もない。
なぜ、自分に決闘なんてものを申し込んだのか分からなかった。
相対してみても分からない。けれど、ものすごい形相で睨まれて、逆恨みでもしたのかと思う。
逆恨みで負けたなんて、外聞が悪すぎるだろうと思うが自己責任だろう。
早くこんな茶番を終わったららせて、日常生活に戻りたい。
「頼んだぞ。」
それは思いつめている様な声だと思った。まるでこれから死ぬみたいなそんなこえに驚いていると、強烈なプレッシャーを感じる。
凡庸な男の影がユラリと動く。
それが召喚精霊なのだということに気が付くが、明らかに彼の力の強さがおかしい。
全身の毛が逆立つようなというのは、こういうことなのだろう。
先ほど自分の思った、自己責任という言葉が脳内に警鐘の様に鳴り響く。
これは、形式だけの決闘にはなりそうにない。
なにか、こいつから恨まれる様な事をしただろうか。
そんな覚えは無かった。
早々に決着をつけた方がいい。
妙に相手の顔色が悪い。どうせ碌でもない術に手を出してしまったのだろう。
踏み込むと、杖を振るう。
術式の発動は完璧だったはずだ。実際顔色の悪いそいつは息を飲んだ。
けれど、次の瞬間、発動した魔法をそいつの精霊に粉砕された。
実にあっけないものだった。けれど見事なものだった。
バラバラになる術式をそれでも刃に変えて精霊に向って降り注がせる。
けれど、精霊は全く意に介さず俺に突っ込む。
それからニヤリと笑って攻撃魔法を発動させた。
明らかに手を抜かれているのが分かる。それで、初めて悔しいと少しだけ思う。
自動発動型の防御陣が発動するがそんなものは易々と貫通して、体が吹っ飛ぶのが分かった。
決闘相手が慌てて飛び出てくるのが見えた。