63

視聴覚室は暗幕が締め切られており薄暗かった。

「この方が苦悶の表情が見えにくいから安心でしょう?」

一人奥の方まで進んでアイラは振り返った。
それが異能によるものなのかは分からないが、とにかく調べた事は確かだろう。

「なんでそんなに御仁にこだわるんだ。」

理一が話しかける前に雷也が口を開く。
同時に槍沢の舌打ちも聞こえる。

「当たり前でしょう?石がなければ我々白崎は現状生きてはいけませんから。」

はっきりとアイラは言う。先ほどから似たような話しを繰り返していた。

「守護石はお渡ししているはずです。」

雷也が答えるこれも先ほどした話しだった。

「あんな、細石で何とかなると思っているんですか?」

首をかしげる少女は薄暗がりでもかわいらしい。

「……その、守護石の製造方法は?」

一総の声は抑揚が無い。理一がギクリと固まる。
製造方法と言っていたことから気がついてしまっていることを知ったためだ。

「それは俺が説明します。」

心臓が早鐘を打っている。一総に知られてしまって、それを受け入れられるのか。
馬鹿みたいな暴力衝動があるだけで、役にたつのは石の件だけなのだ。

少なくともこれから周りは皆そう思うだろう。

それでもいいだろうか。理一が説明の前に一総に向けて確認をしようと口を開いたときだった。

一総は、理一を後ろから抱きしめる様にして、腕を回した。
手のひらで話そうとした口を覆う。

「木戸。大丈夫だから。」

もごもごとしてしまって答えられず、理一は振り向こうとする。

「実演してやるつもりなんだろう?」

静かに一総が言った。
その間誰も喋らなかった。

理一は覚悟を決めて頷いた。

«   »