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理一は持っていたペンケースからカッターナイフを取りだす。
自分の治癒能力の関係で、切り付け続けなくてはいけないため、切れ味が良いもので切った方が色々とマシだというだけだ。

うめき声位上げてしまいそうだった。

大きく息を吐き出して、理一は自分自身の左手にカッターナイフを突き刺した。
ここまではもう慣れてしまった痛みだった。

そこからカッターナイフで、理一は自分の手のひらをえぐる。
滴り落ちる血液が途中で結晶になるように凝固していく。

血の匂いが室内いっぱいに広がっている気がする。

「こんな事聴いていないぞ。槍沢に話しが来ていないはずだ。」

抗議している様な口調だが、声に力は無い。

一総が溜息をついた。多分これのために自分が生きている事に気がついてしまっているだろう。
その位読み取れない人ではない。

けれど、一総の口から出た言葉は、落胆でも嘲笑でもましてや同情でもなかった。

「木戸は俺の異能が効きにくいから。」

そう言いながら、一総は理一に触れた。
痛みが少しだけ和らいだ気がした。

恐らく気がした訳でなく実際に痛みは柔らでいるのだろう。
ずっとずっとそうだった。

性行為のときの痛みも何もかも、一総が和らげてくれていた。
その事すら分からないほど理一は馬鹿ではない。

「アンタのそれ、リスクは無いのか?」
「お前のそれよりは、少なくとも無いから。」

その間にも血はボタボタと垂れている。
こんなもので充分だろうとカッターナイフを引き抜く。

アイラに視線を移すと、彼女はニコリと笑っただけだった。

「能力を込めなければ、結晶化できない石なんですね。
貴方の意思が無ければ作れない。」

だから、協力をお願いしたいのです。
最初からそのつもりだった様にアイラは話した。

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