その一人が自分であるということに理一はすぐに気がついた。
自分と一総と目の前の少女の共通点等、理一には見出せなかった。
けれど二人の目の前で立ち止まった少女はニコリと笑顔を浮かべた。
「木戸さん。この前はありがとうござました。石のおかげでだいぶ容態が落ち着いた子もいるんですよ。」
「父に伝えておきます。」
理一が答える。けれど不思議そうにこちらを見ていて居心地が悪い。
「何故ですか?貴方の体の一部なのに。」
理一が思わず息をつめる。そんな事を部外者に聞かれるわけにはいかなかった。
「おい。何を言ってるんだ?」
白崎が語気を強める。
「あら、お兄ちゃん知らなかったの?
あれはこの人の血を凝縮したものよ?」
誰にも言ったことは無かった。一族の中でも一部の人間しか知らない事実だった。
今、知っているのは自分と父と残り数人のはずだ。
それを目の前の部外者が簡単に話してしまう事実に理一は思わず手が出そうになった。
それを一総は軽々と止めてそれから、妖艶な笑みを浮かべた。
「過去視と未来視とどっちだい?」
まるで小さな子供に聞くように一総は少女に聞いた。
「花島なら知っているんじゃなくて?」
「白崎の一族が数秒先の未来を見ることができる事は知っている。その代償として呪いを受けている事もね。
でも、君のそれは一族のほかの人間の能力とは異質だよね。」
「そうね。一総さんが花島の中で異質なように。」
まるで挑発だった。
けれど慣れているのだろうか、一総はやれやれといった風に息を吐いた。
「君が俺と木戸の事をどこまで“調べた”のかは知らないけど、それで、お兄ちゃんに任せられない用事って何?」
一総が浮かべた笑顔は先ほどまでより一層妖艶で目の前の白崎がゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
「まず一つ目は、守護石をもう少し別の形でいただきたくて。」
歌うようにいうが、理一の血だと知った上での話だ。
「それこそ、木戸の家を通してください。」
理一が掃き捨てるようにいう。
「もはや枯渇しかけている木戸を通す事に何の意味があるんですか?」
態とやっている。それは分かっているのに理一は皮膚がざわざわする様な感覚になった。
どちらにせよここで話すような内容ではなかった。白崎も自分の妹の言っていることに戸惑っている事が手に取るように分かった。
その空気を変えたのは今話している4人ではなく、客人に気がついた第三者だった。
「何をやっている!」
声の主は理一の見知った者だった。