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最初の時も理一の部屋でだった。
あの時は何でもいいから忘れさせて欲しかったから手を差し出した。
では、今日は何なんだろう。
理一は一総の舌に自分のそれを絡めながらそんな事を考える。
自分はやはり九十九で、暴力をふるう瞬間高揚してしまう事実を忘れたいからだろうか。
理一はそれを否定する。
高揚したのは事実だし、そんな事は端から分かっていた。
けれど、今こうして一総を部屋に招いて、お互いの体に触れながら口付けを交わしているのはその事実を忘れたいからでは無い。
自分の体が熱くなっているのにも関わらず、一総の体の方が暖かく感じる。
少しは興奮したのであろうか。
それが先程までの所為なのか、今自分としている行為の所為なのかは知らない。
理一の後頭部を撫でる手の優しさが、熱さがたまらなくここちいい。
自分に今までにない感情がこもっているからだろうか。
まるで初めての様に感じられる。
それに多分目の前の男も気が付いているのであろう。
いつもより、執拗に理一の口内に一総の舌が這いまわる。
思わず一総の背中に回した手に力が入る。
理一の頭を支えている一総のてがさらに優しく理一の頭を撫でた気がした。
ようやく一総が理一の唇から離れた時には、目には涙がうっすらと溜まっているし、息は半ば絶え絶えだったし唇も舌もしびれた様になってしまっていた。
それは、一総が花島で唾液に媚薬効果があるからでも何でもなく、ただお互いに長い時間むさぼりあっていた為だという事を理一はよく分かっていた。
久しぶりの刺激に体が熱い。
もう何度も全てを見られて、体を差し出してしまっているのに、心臓の音がうるさい。
ベッドに向かい合う様に座っていた一総の頭が理一の肩に額をつける様に体重をかける。
ひそやかに一総が笑った音がした。
「そんなに緊張されると、こっちまで緊張するな。」
一総が言う。
「いや、悪い……。」
「悪かないけど、そんなに違うものかって思っただけだ。」
「……分かってて聞いてるだろ。」
声が妙に嬉しそうなのを隠していなくて、ああ、やっぱり全部お見通しなのだろうと思った。
場数が違いすぎるのだろう。
「まあ、わかってるけど、それでも知りたいんだ。
教えてくれるか?」
顔を上げた一総と目が合う。
その表情は、切なげでその表情を見ただけで理一は心臓の音が一層うるさくなった様な気がした。