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「……俺は多分、アンタの事が好きなんだと思う。」

理一が口を開くまでやや時間がかかった。
けれど、それを静かに待っていた一総はその言葉を聞くと花の咲いた様な笑顔を浮かべた。

「俺に、好かれる様な要素は何も無かったのにな。」

理一は一瞬その言葉を自分が言ったのかと思った。
その位、同じことをずっと思っていた。

同じことを一総が思っていた事が少し面白かった。

「アンタの糞みたいに不器用なところ、嫌いになれる訳ないでしょう。」

人を支配できる能力を持っているからでも、同じ先祖返りの化け物だからでもない。
ただ、目の前の花島一総の不器用さが愛おしかった。

「ああ、それは分かるな。俺も木戸のそういう部分愛おしいと思うから。」

今までだったら、反発していたかもしれない言葉も素直に受け取れた。
けれど、あまりの気恥しさに理一が思わず俯くと、一総の喉でクツクツと笑う声が聞こえた。

「なんでアンタはそんなに平常通りなんだよ。」

思わずそんな恨み言を言いながら理一は顔をあげる。
視線が合うが、そこには理一の想像していた余裕のある表情の男はおらず、やや紅潮した顔で切なげにこちらを見ているだけだった。

「続きしましょうか。」

どうにも堪らない気持ちになって理一はそんな事を口走ってしまった。

一総に触れられたところがどこも熱い。

それが、一総の手腕によるものでは無い事を理一はもう知っている。

今であれば、ただ触れられただけであられも無い声を上げてしまいかねない。
その位興奮しているし、ずっとこのまま二人だけでなんて柄にもない事を考えてしまう位だ。

それなのに、この人を閉じ込めたいだとか何もかもを奪ってしまいたいとは思わなかった。
不思議な感覚だった。

「入れるから……。」

ぐずぐずに解された後孔に切っ先をあてがわれて耳元でささやかれる。
理一は思わず震えてしまうが、それが歓喜によるものだと理一自身もそれから一総もわかっている。

この行為を始めて心から願っているのだと体が伝えていた。

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