続編1

イベントは無事終わったが、今の俺の気分はと言うと非常に憂欝だ。

安田には飲みに行きましょうと言われたが、基本的に打ち上げはジャンルごとに行う。
コミュ障といって差し支えの無い俺でも、一応毎回声はかかるし参加もしている。

そう伝えると安田はうんうんと頷いた。
納得してくれたのかと喜んだのもつかの間

「打ち上げの幹事ってどの人ですか?」

と満面の笑みで聞いてきた。
俺に断らせるつもりかと体を固くすると、ぷっと吹き出した後違うと言った。

「いや、俺も参加させてもらおうかな?と思って。」

売り子やお手伝いの人も参加してOKでしょ?その飲み会、と安田は言った。
いやいやいや、俺お前と飲みたくないし。

そう言えるはずもなく、仕方がなくいつも打ち上げを主催してくれているサークルさんを教えた。

「じゃあ、俺交渉してきます。」

不審人物として通報されれば良い。

俺の願いも空しく、安田は打ち上げに参加していて、しかも俺よりよっぽど馴染んでいた。
マジかるミミちゃんの決め台詞を叫びながら一気飲みする奴、ひたすら良くわからない理論の考察を語る奴、はっきり言ってカオスと呼ぶにふさわしい状況なのにひく訳でもなく今も大手サークル主とミミちゃんの主題歌について楽しそうに話している。

――マジでオタクなんだな。

感慨深くその様子を見た。
イケメンでコミュニケーションスキル高いって完全にチートなのに、オタクとかって何だか少し面白いな。
素直にそう思った。

打ち上げはつつがなく終わり、二次会にもと誘われたが基本的にいつも出ていないし断った。
安田も断ったようだ。

「それじゃあまた会社で。」

俺が手を上げて帰ろうとすると腕を掴まれた。

「まだ、話したい事あるんですけど、飲みに行きましょう!!」

と言われた、俺は全く話したい事は無い。

「いや、帰る。」
「明日有給取ってましたよね。時間は問題ないんでしょ?」

いや、確かに有給は取ったがそれは原稿とイベントで疲れきっているからだ。したがってお前と飲む元気等は無い。
そう言えたらどんなに良かっただろう。

俺に出来た事と言えば、そっと安田から視線を外す位だ。

「良い店知ってるんですよ。さあ行きましょう。」

イケメンスマイルの無駄使いで俺に笑いかけながら、安田は案内を始めた。
仕方なく、俺はその後に続いた。

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