小鳥遊にメールを送った次の瞬間、もう後悔がどっと押し寄せた。
だけど、俺の覚悟が決まらずに待たせてしまったのだ。
何度もそういう雰囲気になったことはあった。
俺も何も知らない訳じゃないし、自分が突っ込む側なら少なく無い人数と経験がある。
だから、という訳ではないのかもしれないけど、ああいい雰囲気だなって言うのはなんとなく分かる。
そういう、俺なら押し倒すだろうという瞬間にも小鳥遊は一歩引いてしまうのだ。
それは単に彼が慣れていないということではないと思う。
多分だけど、小鳥遊は童貞じゃないし、そもそも俺の反応を見てやめている感じなのだ。
空気が読めないどころかむしろ読めすぎているのだろう。
それに甘えてふわふわとしている自分も悪かったのかもしれないけれど。
別にSEXだけがすべてだとは思わないけど、何もなくてもって言える程健全ではない。
ゴシゴシと泡立てたスポンジで体をこすりながら悶々と考える。
そもそも、俺は見るからに男という体系だし、小鳥遊は俺が他の子と致しているところを見ているのだ。
「本当に俺相手に勃つのかなあ。」
あまり思い出さないようにしていた、あの嫌悪のこもった小鳥遊の顔を思い出す。
ぶんぶんと濡れたままの頭を振って馬鹿な考えを押し出した。
◆
小鳥遊が返ってきたのは9時過ぎだった。
「女の子の恰好をしていた方が雰囲気でたかなあ?」
茶化すように言うと「何言ってるんだ。」と返された。
「お前がそっちの方が興奮するって言うならすればいい。」
そう言うと小鳥遊は荷物を下ろすと、俺の方まで近づく。
「俺にぶっ壊される覚悟は決まったか?」
見下ろすようにして確信をつかれる。
「あはは、もうちょっとオブラートに包んでくれてもいいのに。」
精一杯の虚勢を張って返したのに、見下ろす小鳥遊は笑っていてちょっとだけムッとした。
「そういうところが壊したくなるんだ。」
「いつもは甘やかしているのに?」
「それはそれ、これはこれだろ。」
隠すつもりが無くなったのか、小鳥遊の顔は獰猛な獣の様だ。
俺が隠れて見ていたということに気が付いてしまった所為だろうか。
それを今聞くのはあまりにも野暮な気がした。