それでも一緒にいたい8

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思ったより、時間がかかってしまった。
資料はとても重かったし、社会科研究室は遠いし散々だ。

早く教室に鞄を取りに戻らないといけない。

1年の教室がある2階まで戻ってくると、教室に人影がある。

こんな時間まで残っている人いるんだと不思議に思う。
(うちの学校は全寮制のため意味もなく学校に残っている人はあんまりいない。
喋ってたりしたいなら寮ですればいいので。)

そっちの方を見ていると意外な人がいた。
優斗先輩だ。
確か優斗先輩は部活には入っていなかったはずだけど、
委員会とかだろうか?

せっかくなので、どうしたのか聞いてみることにした。

「優斗先輩」
「のわあ!!」

優斗先輩はものすごく驚いて、意味不明な単語を発していた。
そんなに驚くことないのにと思う。

「こんな時間までどうしたんですか?」
「いや、それはね、あのー、そのー。」

窓の外をちらちら見ながら優斗先輩が答えた。
言いにくいことなのかな?
もしかして居残りで課題とかやらされていたとか。

それにしても窓のほうばかり見て、なんかあるのかな?
僕も窓の外を見てみた。

「あれ?たしか優斗先輩と同室の……。」

確か小鳥遊(たかなし)先輩という名前だったと思う。
剣道か弓道部だろうか?
紺色の袴をはいている人が水道の辺りにいる。

「あー、ほ、本当だ。小鳥遊いるねえ。
ツ、ツバサちゃんは、目がいいねえ。」

あわてているのか少しかみながら優斗先輩が話す。

外にはこれといったものが他にはない?
優斗先輩は小鳥遊先輩を見ていたんじゃないのかなあ?

「そ、そんなことよりツバサちゃん。
こんな時間まで学校にいるなんてどうしたの?」

明らかに話題を変えたいという空気で優斗先輩が聞いてくる。
その最中も視線はチラチラ窓の外だ。

僕はなんとなくわかってしまった。
これも、楓のBL修行のおかげか。
(あれは辛かった。ひたすらBL漫画や小説を読むというのを土日中ずっとさせられた。)

「優斗先輩、小鳥遊先輩のことが好きなんですか?」

つい、思ったことが口を出てしまった。

驚愕で目を見開いた後、優斗先輩は図星をつかれたせいか真っ赤になっている。

「な、何で知っ…!!」

僕は質問しただけなのに、優斗先輩は自爆した。
ここで何のこと?とか違うよとか言えばごまかせるのに。
涙目になって慌てている。

「あ゛ー。俺馬鹿だ。
なに墓穴掘ってるんだろう。
どうしよう、どうしよう。」

優斗先輩ぶつぶつ何か言っている。
ちょっと怖い。
やっぱり、聞いちゃいけないこときいたかな。
自分が聞かれたら困ることを聞いちゃいけないよな。
僕も島田先輩のこと好きなの?って聞かれても困るし。
いや、でも優斗先輩に冗談でからかわれたことはあるし。

「あ、あのー。優斗先輩?」

僕が声をかけると、ハッと気がついてこちらを見る。
しばらく、あーとかうーとかいった後先輩は

「ここじゃあれだからちょっと俺の部屋来てくれない?」

と言って、どういうことになっているのか意味のわからない僕を引きずって優斗先輩は自分の部屋に向かって行った。

僕の鞄はまだ教室に置きっぱなしなんだけどな。