それでも一緒にいたい11

それからというもの週の半分くらいは放課後優斗先輩と過ごすようになった。
普通に学校であったことを話したり、お互いの好きな人の話をしたりしていた。
恋愛の話を隠す必要がないので、優斗先輩といるときはとても楽だった。

島田先輩とは相変わらず気まずいままで、一緒に図書当番をしていてもほとんど話すことはない。
せめて、告白前みたいに戻れたらとも思うが、こればっかりはどうしようもない。
前ほど告白したこと自体は後悔しなくなった気がするが、どうしても「たら、れば」で告白しなければ友達としてだけどもう少し親密になれたんじゃないかと思ってしまう。
うーん、女々しいな僕。
そんな話を優斗先輩にしたら

「そんなところがツバサちゃんの可愛いところじゃん。」

と言われた。
男に可愛いはほめ言葉じゃないと思う。

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「そういえばさあ、ツバサちゃんって拓斗のこと名前呼びしないよね。なんで?」
「それは、あの、そんなに仲良くないですし、それに恥ずかしくて。」
「俺ら双子だから大抵のやつが名前呼びじゃん。今度名前で呼んでみたら?」
「む、無理です!!ただでさえ気まずいのに。『やめろ』って言われるのが落ちですよ。」

今日も放課後は優斗先輩と過ごしている。
大体僕の部屋で過ごすことが多い。
優斗先輩は小鳥遊先輩との一件があってからあまり人を自室に入れたくないようだし、僕の同室の楓は大体放課後は腐男子としての活動といってどこかに行っていることが多いので必然的に僕の部屋になっている。
僕と違って優斗先輩は友達も多いのに僕のために時間を作ってくれている。
すごく嬉しい。
優斗先輩と過ごすことにも慣れて緊張しないで普通に話すことが出来る。

「優斗先輩こそ小鳥遊先輩のこと名前呼びしてもっと仲良くなればいいじゃないですか。」
「いやあ、中々難しくてね。もう嫌われてるんだからこれ以上仲が悪くなることもないんで良いちゃあ、良いんだけどね。」
「そもそも、直接嫌いって言われたわけじゃないんだから、嫌われているかどうかなんてわからないじゃないですか。優斗先輩そういうのもみんなやめたんだし。」

さすがにセフレを切ったと直接言うのは何か恥ずかしいので濁してしまった。
でも優斗先輩はわかってくれただろう。

「それは、希望的観測だよ。
あーあ、俺が拓斗みたいだったら小鳥遊とせめて友達にはなれたのかも知れないね。」

口調は軽い感じで言っているけど顔は真剣そのものだ。

「優斗先輩には優斗先輩の、島田先輩には島田先輩の良さがあると思いますよ。」
「……ありがとう。」

「でも、また島田先輩って言ってる。拓斗って呼べば良いのに。
いま言ってみ?拓斗って。」
「……。」
「ほらー。」
「…た、く…と。」

顔が真っ赤になっていくのがわかる。

「ツバサちゃん可愛い。
恋してるって感じだね。」

優斗先輩が囃し立てている。
仕方がないじゃん。恥ずかしいんだから。

「じゃあ、この調子で今度呼んでみなよ。」
「無理です!!」

ガチャガチャ鍵を開けると音がする。

「ただいまー。」

楓が帰ってきたみたいだ。

優斗先輩は時計を見ながら

「ああ、もうこんな時間か。
じゃあ、今日はこれで帰るね。
また、メールするね。」

といって帰っていった。