同居しますか11

帰り途中に、コンビニによって昼飯を確保した。
今日はベッドが届くので自炊する時間は無いだろうという判断からだ。

何故か、変態馬鹿が奢ってくれた。
裏がある気がした。。
しかし、イッケメーンスマイルの前に俺は敗北してしまった。
まあ、返せって言われたら別に返せる額ではあるし、あまり気にしないでおこう。そう思いながら二人並んで歩く。

家に帰ってきて門をくぐる。純日本建築のため、敷地には門がある。普通日中は扉を開けておくべきなんだろうが、そもそも俺は大学に行っているため、防犯上もあまりよろしくないので、今日は普通に閉めてでた。
配送業者が来るはずなので門を開け放ち、閉じないようにとめた。

「先、昼飯でいいよな?」

敬語など使う気になれず普通に聞く。

「ええ、直ぐにでもという気持ちが無い訳ではないのですが、貴方も食べるんでしょう?」

馬鹿も普通に返す。

「資料の類は蔵に入ってるから、先に食べてもらった方がいいと思う。」

顔を蔵の方に向け、指をさしながら言った。

昼飯を簡単に済ませ、寝室から蔵の鍵を持ち出した。
馬鹿と外へ出ようとしながら南側の部屋も紹介する。
縁側の横にあるこの部屋は、祖父の書斎だった場所だ。
祖父が亡くなった後も、そのまま手つかずの状態になっている。

馬鹿にもその旨を伝え、ここも見ていいと言った。
蔵との行き来は庭から直接入ればいいだろう。

外に出て、蔵の鍵をあける。
合格発表のすぐ後、掃除のために来ているので、およそ一カ月ぶりだろうか……。
殆ど太陽光が入らず薄暗く、ホコリ臭い室内を進んでいき、室内灯を点ける。
昔ながらの白熱電球が心もとなく光った。

「大体一階が祖父の研究資料だ。ここは暗いから、読みたいものがあれば、さっきの書斎に持っていって読めばいいと思う。俺は部屋のかたずけをしているから。」

俺が言うと、馬鹿は、返事もそこそこに、資料が入っている棚をあさり始めた。
俺が声をかけても、もう聞こえないようだった。

そっと蔵を出て部屋に戻るとすぐに、配送業者がベッドを持ってきた。
マットレスとベッド本体だ。
ベッド本体といっても、通信販売でお得価格で売られているものだ。これ材料っていうんじゃないんだろうかという板や棒を不親切な説明書を見ながら組み立てる。
何とか、今日の寝床を確保できたところで我に返ると、もう夕方だった。

さすがに今晩もコンビニ飯だと味気なさすぎる。
財布を掴んで買い物に行く事にする。
一瞬あの馬鹿に声をかけてからとも思ったが、めんどくさくなり念のため、茶の間スペースに書置きを残していく事にした。
縁側のまどの鍵が開いているので意味がないと思いながらも一応玄関の鍵を閉める。
出るときにちらり、と蔵の方を見ると、扉は相変わらず半開きになっており(そうしておかないと内側から開けるのは結構大変なのだ。)まだ、そこに馬鹿がいる事が分かる。

何故、昨日会ったばかりの、意味不明な行動ばかりとるあいつの事を俺がこんなに気にしてやらなければならないんだ。
ぶんぶんと首をふって気分を切り替えた。

買い物から帰ってきて、夕食を作り終える時間になっても、あの馬鹿は部屋に戻ってこなかった。