同居しますか5

「それじゃあご飯食べましょうか。えーと、あれ?何君でしたっけ。」

あれ?俺、自己紹介したか?していない気がする。

「山中 智史(やまなか ともふみ)だ。」
「智史君って呼べばいいでしょうか?」
「山中で充分だ。」
「友達ですから、名前で呼びたいじゃないですか。」
「そういうのは彼女にでも言えよ。」
「今、恋人居ないし無理ですよ。」

へえ、こんな美形に彼女いないなんてことあるんだな。
少しでも欲しいと思えば合コンでも行けばより取りみどりだと思うが。
いや、俺だったらこいつ合コンに呼びたくないか。いい女みんな持っていかれるもんな。

「なに、一人で百面相しているんですか?」
「いや、なんでもない。」

顔に出てたか、気をつけないと。

「そういえば、なんで帰るとこないんだ?」
「前はちゃんとアパート借りてそこに住んでいたんですよ。
ですが、とある論文を発表してから企業からのヘッドハンティングが増えまして。
家にまで押しかけられるようになってしまったんですよ。
しばらくはホテルに泊まったりしていたんですが、アパートの入り口でずっと待っている人まで現れてしまって。近隣の方にも迷惑になるということで追い出されてしまって。
その後は、毎日ホテル暮らしというわけにも行かないので大学に泊まったり、友人の家に泊まったりという形をとっていたんですが。
そんな生活も半年となると中々泊めてもらえる友人を探すのも大変になってきまして。なので今日はとても助かりました。」

論文?もしかしてこいつめちゃめちゃ頭良いのか。天は二物でも三物でも与えるということか。
でも、その所為で大変な目にあってるんだな。大学とかは何か対策とらないのか?
ああ、企業からの援助で研究をしている研究室もあるから中々強く出れないのか。
だからといって、こんな目にあわせていいというわけではないが。

じゃあ、親は何をしているんだ。これは、余計なお世話か。

「あの、信じてもらえたでしょうか。」
「!? 嘘なのか?」
「嘘なら良かったんですが、残念ながら。」
「頭良いやつも大変なんだな。」
「いえ、僕にはこれしかありませんから。」

これしかないか。俺もそんな風に行ってみたいと思うのは凡人の僻みだろうか。

「ところで、論文ってどんな内容なんだ?」
「遺伝子と新薬に関するものです。特許の関係もあるので詳しくは話せないのですが。」
「その新薬の関係で追っかけまわされてるのか?」
「まあ、そんなところです。」
「あなた、珍しいですね。こんな話すると普通は取り入るか、引くかするでしょうに。若しくは親はどうしてるんだと聞くとか。」
「じゃあ、親はどうしているんだ。」
「ふふっ。」
「なんで笑うんだよ。聞いて欲しかったんじゃないのかよ。」
「いえ、親はとっくに居ないので見当違いなこと聞かないで欲しいという意味で言ったんですよ。」
「……すまん。」

聞いてはいけないことを聞いてしまった。
そうだよな。親がいればここまで困ってないよな。

「気にしないでください。僕自身はとっくの昔に吹っ切っていることですし。」

ニコニコ笑っているのをみたが、なにか引っかかる本当に吹っ切っているのか?
だが、今日あったばかりの相手にさすがに聞くわけにはいかない。

「とりあえず風呂はいってこい。」
「いえ、家主を差し置いて先に入るわけにはいけません。お先にどうぞ。」
「そんなこと別に気にしなくてもいいだろう。」
「では、一緒に入りますか?」
「とっとと先に入ってこい。」

やっと風呂に行ったのを見送って、ため息を一つついた。
今のうちに布団の準備をするか。
寝る場所、客間でいいだろうか。