多分割と、風呂は好きだ。つい、鼻歌なんか歌っちゃう程度には。
湯船に浸かって、ふんふんとメロディを追うと後ろからふっと笑った息遣いが聞こえた。
「音痴だった?」
振り向いて聞くと、首を横に振られた。
「そうやって歌ってる優斗は自然体だな。」
匠吾に言われて少し困る。
「そうかもしれないけど、外での俺も、普段の俺も、俺だよ。
その場その場に合わせて、空気は読むけど、どっちも俺自身の一部だよ。」
そう言うと、「そうか」と返された。
「匠吾のおかげだよ。どの自分も大切だって思えたのは。」
こんなことを言うのが恥ずかしくなって、ばしゃばしゃと風呂のお湯で顔をゆすいだ。
なーんちゃってと続けるつもりだった。茶化してしまいたかった。
振り向いたところで、匠吾に強く抱きこまれてそれは叶わなかった。
了