私は小鳥を飼っている。
それはそれは大切に愛しんでいるのだ。
小鳥は臆病な生き物だ。
犬の様に散歩をさせるのはストレスになる。
家から出さず、私以外の目には触れさせず。
それが私にとっての幸せだし、小鳥にとっても幸せだと信じている。
◆
小鳥は最近歌わなくなった。
以前は美しい声で歌っていたのに、歌わない。
健康管理は万全を期している。
それなのに、小鳥は歌わない。
小鳥に声をかけるが反応は薄い。
毛艶はいいのだ。
といっても、小鳥に毛艶という言い方はおかしいのかもしれない。
「小鳥、こっちへおいで。」
リビングのソファーに座り小鳥を呼んだ。
小鳥は、一瞬びくりとした後、こちらに来た。
大きな声を出しすぎてしまっただろうか。
安心させるように頭をそれから体を撫でる。
小鳥はおとなしくしている。
ふと見ると、爪が伸びていることに気が付く。
「爪伸びてきたねえ。切ろうか。」
「っ……!」
小鳥が体を固くする。
頭の良い小鳥が、爪という単語に反応した。
「ここで、お利巧に待っているんだよ。」
そう、小鳥に声をかけ、道具を取りに行く。
直ぐに戻ると、ソファーの端で小鳥がこちらを見ている。
「さあ、始めようか。」
一本一本処理をしていく毎に、小鳥が甲高い声を上げる。
愛玩動物というのは得てして、爪切りが苦手だ。
漸く、すべて処理が終わったが細かく震える上に、時々逃げ出そうとするので血が出てしまった。
手早く消毒して。その箇所に包帯を巻いた。
私を、見上げた瞳がまるで泣いているようで。
小鳥への愛情を一層深めた。