最初はただの逃げだった。
それ自体が馬鹿げた行動だった。
上半身裸になった一総の胸にはまだ契約印がある。
解除の方法があるのか調べてもいない。
何かあったときに殺して欲しい気持ちも変わっていないのだからどうしようもないけれどそれでも理一は最後の手段以外の二人で生きていける道を探したいと思えた。
そっと理一の目瞳と同じ色の契約の証に口付けをする。
一総が理一の頭を撫でる。
「解除する方法が分かったらちゃんと伝えて欲しい。」
「まあ、気が向けば。」
「……木戸が自分の状況が理解できないほど錯乱したときは俺の力で何とかするよ。」
一瞬、一総の瞳に狂気が宿るのを理一は見た気がしたがそれはすぐに消えてしまう。
「今は、それよりコッチに集中して欲しいもんだな。」
一総が腰をゆるゆるとゆすった。
思わず鼻から抜けるような声をだしてしまった理一はもう一度一総の背中に腕を回し瞼を閉じた。
それが合図のようなものだった。