ずるり。中を穿っていたものを引き抜くと、理一がそのままベッドに倒れ込む。
手加減ができなかった。
今まで理一相手にもそうじゃなくてもきちんと手加減出来ていた。
その時求められているセックスを一総はきちんとこなしていた筈だ。
なのに、恋人だと思いこませている状況なのに、この体たらく。一総は自嘲気味に笑う。
今までの理一であったのならば恐らく意識はきちんとしていたのだろう。けれど今日の理一はぐったりとしていて瞼も閉じてしまっていた。
術はそれなりに効いている。楽しい夢を見ている状態で、理一は力なき普通の人間として振る舞っていた。
だから、かもしれない。
穏やかな環境を作ってやりたい本人がこれじゃあ意味が無い。一総は自嘲気味な笑みを顔に貼り付けたまま、ぐったりとする理一の項に唇を落とした。
理一が身じろぎをする。
気を失ったまま寝てしまったという事だろう。
一総は適当に自分の服を着て、それから理一の体を拭き清めた。
風呂に担いで行っても良かったのだが起きてしまいそうでやめる。
今、理一と目があってしまうと何を言ってしまうか分からなかった。
綺麗になった体に、自分の寝間着を着せる。
そのまま横に寝ころぶと一総はぼんやりと理一の顔を眺めた。
男らしい顔つきではあるが、精悍というのとはやや違うと思った。
周りが彼を馬鹿にしなければもっと違う物が見えてくるはずだ。そう一総は考えている。
癪ではあるが、仕方が無い。
この美しい男が意味も無くしおれていく様を見たくは無かった。
だから、せめてこのぬるま湯の様な世界が一日でも長く続く様に一総は全力を傾けるしかない。
そうすることで術が解けてしまったとき、少し前までと色々な関係性が変わるはずなのだ。
それが花島の能力だ。
ただ、この術が解けてしまった後、元々術が極端に効きづらい理一との関係がどうなってしまうかだけは一総には分からなかった。