※WT 嵐佐 途中までしか書いてません
知っている。
知っているんだ。
自分が絶対に一番になれない人間だという事は。
あの人が本当の処、おれの事なんか何一つみていない事も。
でも、それでも壊れてしまいそうなあの人のそばで彼の事を支えていられればそれだけで充分なんだ。
ただ、時々。本当に時々だけど全てをぶち壊してあの人の重荷を全て取り払ってしまいたいと思う事がある。
◇
「あー、彼女欲しい、彼女欲しい、彼女欲しい。」
ブリーフィングの資料がまだ出たままのタブレット端末を横にずらして佐鳥は机の上に突っ伏した。
「藪から棒にどうしたの?」
時枝がやれやれといった様子で佐鳥に聞くと、うなだれたまま佐鳥は言った。
「癒しが欲しい。決め顔作ってるのは疲れるし、他のA級隊員にはキメェって笑われるし、優しい恋人と楽しく暮らしたい。」
ブツブツという佐鳥に時枝は苦笑した。
「本当は彼女なんて作るつもりないのに?」
全てお見通しという体で時枝は言った。
「まあ、広報としてボーダーに迷惑はかけない様にするよ。」
いつもの笑顔を浮かべながら佐鳥は時枝に言った。
「本当に嵐山さんとそっくりだね。」
呆れの混じった声で言った。
「おれと嵐山さんがそっくり?」
ないない、と手を前で振りながら佐鳥は返した。
「そう、そっくりだよ。自分の本質を知られたくないところも、良いかっこしたいとあがいているところも。
それから、ボーダーの為っていい訳してるところもね。」
佐鳥は自分自身のスタンスを言い当てられてぎくりと固まるが、嵐山さんは違うだろうと時枝を見つめ返した。