7(後)

 精霊はこんな風に人間と掛け合いはしない。
 それを友人が分かっている感じはしないけれど、何も言わない。

 それは精霊の力が恐ろしかったから、ではなくて友人の精霊に対する態度を見ての事だった。

「お前の力ならすぐにでも戦況をひっくり返すだろうな。」

 そうすれば停戦ができる。そこでお別れになるのか?
 そう言った友人に召喚精霊は面白そうに笑う。

「さあ、それはどうだろうねえ。」

 うんざりした様に友人がため息をつく。

「あいつらの事はお前が気にすることじゃない。」

 義兄弟がそう言う。

「義兄さん……。」

 普通じゃない事がおきたのだろう。

「とにかく、無事で良かった。」

 もう俺の代わりに死地に向かうな。
 無理な話なのはお互いに分かっている。

 けれど義兄弟のの切実な声に思わず頷く。

 精霊が今しがた言っていた言葉を思い出す。

 誰にも祝福されない関係だという事は知っている。
 だけど、もう二度と見れないと思っていた彼の顔が見れた。もう二度と聞けないと思っていた声が聞けたのだ。

 願ってもいいだろうか。
 俺と義兄弟の未来を。

「よかったなあ。」

 友人が俺に向かって言った。

 それで、誰にも祝福されない訳ではない事に気が付く。
 最初から友人は俺の気持ちを知っていて、応援してくれていた。

 それで、ようやく一歩踏み出せる。
 俺は多分臆病なのだろう。

「好きです。」

 ここが戦場なのも忘れてそう伝えると、俺を抱きしめる腕により一層力がこもった気がした。