6(後)

 目の前に義理の兄弟と友人がいた。

「なんでこんなところに……」

 一目彼に会えたら、言おうと思っていた言葉とは違う言葉が口をついて出る。
 彼は……、彼らはこんなところにいてはいけない人たちだ。

 近くに、魔法が着弾する音がする。
 二人とも部隊章はつけていない。軍の命令でここに来たのではないなら、彼らがこんなことに付き合う必要はない。

 帰れと叫ぶ寸前、義兄弟が突然俺の事を抱きしめた。
 部隊の他の人間が驚いてこちらを見ていることに気が付く。

 それに俺は、泥なんだかほこりなんだかよく分からないものでぐちゃぐちゃなのだ。

 引きはがそうとするのに上手くいかない。

 一体この人はなんでこんなことをしてるのだろう。

「少しは面白いものが見れたか?」

 寮の同室だった友人がそういう。
 友人は将来の目標なんてないと、少し困ったように笑う事の多い人だった。

 こんな決意のこもった目をする人ではなかった。

 ぬるり。
 彼の背後に何かが現れる。

「うーん、まあ。それなりには面白いかな。」

 それが人でない事はすぐにわかった。
 召喚したものだという事は見れば一目瞭然だ。だけど、友人はこんなものと契約はしてなかった筈だ。

「ああ、でも君の友人様とやらは目はいい。」

 口角を上げて人ならざる者が言う。

「少しでも観察したいなら、手伝え。」

 友人の言い方があまりにも高慢で驚く。こんな言い方をする人間ではなかった。

「まあ、いいよ。この辺の勢力はすべて灰塵に帰してあげよう。」

 ただし目の前の敵は、そこで間抜け面晒しているそいつに頼めばいい。

 そう言われて俺を抱きしめている人が泣いていることに気が付いた。

 次の瞬間、感じたことない様な強大な魔力反応を体が感じる。
 ビリビリと痺れる様な感覚に陥るのは生まれて初めてだ。

 索敵を行っていた仲間が吐いているのを見た。
 あまりにも強い魔力に反応してしまったのだろう。

 義兄弟は俺をを抱きしめる手を離すと、相変わらず美しい手さばきで魔方陣をいくつも出した。

 俺はそれを見て初めて、自分が窮地を脱したのだと気が付いた。