理一は不意に目を覚ました。
辺りは真っ暗でベッドサイドの時計を確認すると午前二時。日の出までにはまだもう少し時間がある。
隣を見ると、一総はまだまぶたを閉じており寝ている様だった。
誰かが近くに居ることが恐怖だった筈なのに、浸食されて、今ではこうして隣に居ることに安心している。
恐らくもう、一人で生きてはいけない自覚が理一にはあったが、それでいいと思っている自分がいた。
理一はそっと一総の手に触れた。
筋張っている手は男らしく、ゆびも長い。
触れていると、妙な気分になってくる。
思わず、一総の手を取りそのまま彼の指に唇を寄せる。
ちゅっ、ちゅ、と音を立てて唇をつける。
寝ている相手に、何をやっているんだと脳裏をかすめたが止められなかった。
別に欲求不満という訳では無い筈だ。
霞がかかり始めた頭で考えても理由は分からなかった。
一総の指を口に含んで舌を這わせる。
こんなの、恋人の体を使った単なる自慰行為だ。
それでも、体の奥で燻り始めてしまった熱情は抑えがきかず、半ば恍惚とした表情で理一は一総の指を舐めしゃぶる。
駄目だと頭の中で声がするのにやめられなかった。
一総が寝間着として着ている、浴衣をはだけさせて、自分のTシャツをまくり上げる。
はあ、と吐き出した吐息が熱く感じる。
理一の指はそっと一総の首筋をなぞる。
それでも一総は身じろぎすらしなかった。
そもそも、理一だけが起きていて、一総が眠っているという状況自体が珍しかった。大体いつでも、一総の方が先に起きていたのだ。
その一総が眠っているというのに、優しい気持ちになる訳でも無く、劣情をかきたてられているのだから笑えない。
理一は一総の口の端に舌を這わせるとはだけたお互いの胸元をこすり合わせた。
乳首の先の方がジンジンとしている。
堅くしこり始めたそこを一総の胸板に擦り付けると脳内が快感で霞が覆う。
寝汗だろうか、しっとりとした肌に自分の乳首がこすれるのがたまらなかった。
ふうふうと短い息が出る。
はしたないと思う気持ちは確かにあるのに、それが逆に快感を生んでいた。恐らく一総を起こして頼めばいくらでも抱いてもらえるというのに、わざわざこんな風にして、自分自身何がしたいのか良く分からなくなっていた。
下肢が先走りでぐっしょりと濡れ始めているのが分かった。
ボクサーパンツが濡れて張り付いているのが気持ち悪い。
けれども、それが快感になっているのは紛れもない事実だった。
理一の口の中は唾液でいっぱいで、嫌が応にも自分自身が欲情していることに気が付いている。
理一は一総の唇に己のそれをつけると舌をねじ込んで絡ませる。
唾液は必然的に理一の唇からぼたぼたと流れ落ちた。
不意に、理一の後頭部が捕まれる。
舌の根元を強か吸われ、頭の芯から痺れた。
そのままキスの主導権は一総に移る。
ようやく、唇を離したとき、理一は息も絶え絶えで肩で呼吸をしていた。
「アンタ、いつから起きて。」
「ん?理一が俺の指を舐めたところから。」
最初から起きていた事を知って、理一は羞恥で顔を真っ赤にした。