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傷つけてしまう。理一はそう言いたかったができなかった。

「素手なら、大したことにはならない。
そもそも着物の上からだろう。」

一総は薄く笑った。
それが根拠があるものなのかどうか、考える余裕は理一にはなかった。

ガツガツと音がしそうなくらい腰を打ち付けられて、理一はただただ一総にしがみついているだけだった。

腰から下がしびれる。
まるで溶けてしまったのかと錯覚した。

一総のこめかみから汗がポタリポタリと垂れる。
理一は手繰り寄せる様に着物を引っ張ると、一総の顔に唇を寄せて、それからそっとその汗を舐めた。

当然ながら塩辛い味しかしないのだが、それでも特別なものの様な気がして、理一は少し微笑んだ。

一総の動きは、丁度理一が汗を舐めたあたりから止まっていた。
呆けたように理一を見下ろす姿をみて、少しだけ優越感を感じた。

理一が腰をくねらせると漸く我にかえった一総は、噛みつくようなキスを落とした。

全部を持っていかれるような、キスをされ、頭がくらくらする。
口を離した時に伝う銀糸の様な唾液が妙に卑猥に思えた。

キスに意識を持っていかれている間に、律動は再開していて、理一は自分の腸壁がグネグネと一総に絡みついているのが分かった。

「もぅ、いやぁっ…あ゛っ、ふぅっんっっ…。」

腸内が痙攣する。
まるで搾り取ろうとするみたいな体の反応についていけず、理一は切羽詰った声を出した。

初めて、中で一総が弾ける感覚を味わった。
それはジワジワと理一を浸食する。

チカチカする視界に眉を寄せながら、それでも理一は口を開いた。

「なに、失敗したって顔してるんすか。数日だっていうなら最後まで付き合いますよ。
意識保ってられるかは分かんないっすけど。」

ふらふらし始めた頭を振るが、改善の兆しはない。
ぼんやりする意識の中で、性欲だけが増していく。

それでも、それだけ絞り出すように言った。
呂律はろくすっぽ回ってはいなかったから、実際はどれだけ伝わったかは分からない。

すると、痛い位に抱きしめられた。
いつもより熱い体温が着物越しに伝わってきて、思わず縋りついてしまった。
快感だけに支配され始めた意識の中、もう少しだけこうしていたいと理一は願った。