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願ったものは何だっただろう。

人から蔑まれない事だろうか、それとも自分が誰かを傷つけない事だろうか。
それとも……。それとも、誰かに必要とされたかったのだろうか。

理一には分からなかった。
ただ、現状より悪くならない事だけに必死でそれ以外の事など考えた事すら無かったのかもしれない。

バチバチと目の前で火花が散った気がした。
今、何を考えていたのか理一には思い出せなかった。

「とりあえず、今はこっちに集中な。」

一総が理一の乳首を甘噛みする。
言葉にならない嬌声を上げ理一は一総にしがみついた。

「俺は理一から逃げないし、俺の方が強いんだから理一に壊されることもないし、何より理一の事が好きだから。
だから、頼ってくれていいんだけどなあ。」

何かを言われていることは分かるのに、その内容は全くわからない。
けれど、理一の目の前で悲しそうに笑う男に胸が締め付けられるのは先ほどから変わらない。

「俺が、あなたを頼れば、あなたは救われるんですか?」

何もわからない。目の前にいるのが誰なのかさえも不確かで、それでもいま理一の心の内にあるのはそれだけだった。

「……もう、充分救われている筈なんだけどね。」

一総はそう言うと理一の両腕をベッドに縫い付ける様に押さえつけてから理一の唇を奪った。

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