多分一生慣れない

あいつに当たると思った俺の足の裏はすんでのところで足首を掴まれて止められてしまった。

「危ないじゃないですか。」

溜息でも付きそうな雰囲気で言われたが、溜息をつきたいのはこちらの方だ。あと数センチできちんと変態の顔面を蹴れたであろう足の裏に舌を這わせたのを見て足を引っ込めようとするが上手くいかない。

そもそも、押し倒されている状況なのだ。
上手く足に力が入らない。

「いい加減、慣れたらどうですか?」

王子様然としていて、言っていることは男に抱かれることに早く慣れろという話なのだ。
さすがの俺もそれには頷けない。

「どう考えても無理だろ。」

溜息交じりで答えるが馬鹿は含み笑いをしているだけだ。

「こんなに、気持ち良くなれるのに強情ですね。」

足の指先から馬鹿の指先が太ももに向かって俺の足を撫でる。
思わずビクリと震えてしまう。それがまるで馬鹿の言っていることが正しいと認めているみたいでなんか悔しい。

けれど、その反応を見て満足気な笑みをうかべている馬鹿の顔を見て、仕方が無いななんて思ってしまう自分自身も、多分こいつと同じくらい馬鹿なのだろう。

なんでそんなにしたいんだよ。なんて聞いたとろでまともな返事が返ってことない事は良く知っている。

「あーあ。」

しょうがない。これはしょうがないことなのだ。
自分に言い聞かせて、体の力を抜く。

「お好きにどうぞ?」

一瞬言葉に詰まったように何も言わないのを見て少しだけいい気分になる。

けれど、直ぐに実際に“好き”にされてしまって、自分自身の言葉なのに撤回したくて仕方が無くなってしまう。
そんな事、目の前の馬鹿にだけは絶対言わないし、こいつも何も聞かない。

けれど、まだ当分なれそうには無いことだけは事実だった。