君へと繋がる1

※亘理高校生、小西大学生の時の話(すれ違って…よりは前)

『俺のこともっと信頼してよ。』
『言いたいことはもっとちゃんと伝えてよ。』

あの人が口癖の様に言っている意味は理解しているつもりだった。
でも、あくまでも“つもり”というだけだったのだろう。

きっかけは夏休みどこかに行こうという話だった。

「小西先輩の無理の無い範囲でいいですよ。」

元々、夏休みは受験勉強とバイト以外特に何の予定も無い。
だから、そう伝えた。

多分、それがいけなかった。
大きなため息がスマートフォンから聞こえて初めてそれに気が付いた。

「俊介の希望は?」

淡々と聞こえるあの人の声は、落胆だろうか。影のある声になっている。
けれど、直ぐに返事はできなかった。

希望?そんなもの四六時中一緒にいられるのであればとっくにそう願っている。
そんなこと現実では不可能だし、ただただあの人の邪魔になりたくない。そちらを優先したかっただけなのだ。

「ねえ、俺ってそんなに信用ない?」

もう何度目になるか分からない問いかけにそれでも答えることができなかった。

「信用してます。信用できないのは……。」

俺のこの我儘な気持ちの方だ。
そこまでは言えず飲み込んだ言葉を、あの人がどう捉えたのかは分からない。

「……もういい。一度お互いに頭を冷やそう。」

あの人はそういうと、その後何かニ三言話していた気がする。
気がするとしか思い出せないのは、あまりにもその言葉が、言い方が、俺を突き放すもので、その言葉を聞いて、初めてあの人が煮え切らない俺にどれだけ歩み寄ってくれていたか気が付いた。

けれど、切れてしまったスマートフォンを前に、どうしても電話をかけなおす事ができなかった。
簡単にいうと、ただただ怖かったのだ。これで二人の関係が無かったことになってしまうことが。