学校はあまり楽しくない。
そもそも、俺はあまり魔法というものが好きでは無かった。
けれど、俺のの国はいま戦争中で、戦う才能のある人間は基本的に戦うための学校に通う。
大した才能の無い俺も今は魔法学校に通っているんだから、きっとこの国はいよいよじり貧なんだろう。
でも、こんなのはあんまりだと思う。
「何で、君が戦地に行かなくてはいけなんだよ。」
寮の同室である友人は困ったように笑う。
「ん?それは俺がウィンザー家の養子だからだろ。」
戦争が激化するにつれ貴族が戦場に出ないことへの批判が集まった。
と言ってももう100年近く前のことだ。
そこでどうしてそうなったか分からないが、貴族は子供が生まれると、その人数と同じ子供を養子にとる。そして戦地にはそちらの子を送るのだ。
そんなのはぼくの生まれる前からスタンダードだったし、彼もずっと前から分かっていたんだろう。
荷物をまとめている友人を見ながらふつふつと怒りがわく。
それは国家に対してなんて良く分からないものへではなくて、友人の同い年の兄弟に対してだった。
多分友人はあいつのためのスペアだったんだろう。それなのにも関わらずあいつは……。友人が今日学園を離れる事実も知らずのうのうと過ごしている人間が居るという事に憤りを感じる。
「言わないのか?」
俺以外誰も知らないと言っていた。
誰からも見送りをされず今日の夜友人は学園を離れる。
「言わないよ。」
ため息交じりで返される。
だって、そんなこと考えたくないけれど、もう帰ってこれないかもしれないんだろ。
友人はそういうが、それなら、最後に言葉位交わしても罰は当たらないんじゃないか?
「それに死ぬって決まった訳じゃないだろ?」
ハンカチを渡されてようやく涙ぐんでいる事実に気が付いた。
思いっきり目を拭く。これから戦争に行く友人と明日からも今まで通り勉強をする俺。
どちらの方が辛いかなんて明白なのに友人はまるでいつもの通りだった。
「帰ってきたら、絶対に胸倉掴んで好きだって伝えてやれよ。」
そういうと友人は先程よりもっと困った顔で笑みを浮かべた。