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お社での光景を見た後、すぐに俺は父親に、自分が生贄になる旨を打ち明けた。
父は、渋い顔をしていたが、兄は働いており、職場にも迷惑がかかる事と、やはり沙良さんが居ることを説明すると、渋々頷いてくれた。
俺にも決まった相手が居るんじゃないか?と聞かれたが、居ないと答えた。好きな人はいるけど、男同士だし、何より挨拶をする程度の関係だ。婚約者の居る兄と比べるのもおこがましい。
俺の『嫁入り』が決まってからの周りは、まるで腫れものを触るかのような状態だ。
まあ、当然と言えば当然だが。
『嫁入り』についての説明も、彼方の父親から受けた。彼方の家は代々お社を守る家系らしい。
説明の内容をまとめると、
【『嫁入り』はお社様との契約の儀式である。
お社様は蛙が神格化した神様だ。
『嫁入り』は満月の日に行われる。
『嫁入り』後、俺は神様の世界で暮らす。
神様の世界とこちらの世界は時の流れが違う。(神様の世界の方が時間の流れが遅いらしい。)
お社様の許可があれば手紙は望月家を通していつでも届けられるという事。
年に一度里帰りが許可される場合が多い事。(ただ、時間の流れが違うため、疎遠になってしまうことも多いらしい。)】
こんな感じだった。
てっきり、その場で取って食われるような想像をしていたので、少し拍子抜けした。
まあ、もうほとんど両親にも、友人にも、そして戯さんにも会えないであろうという事はわかる。
ぐぅっと胸を締め付けられた気がした。
嫁入りは2週間後の満月の日に決まったが、俺はその日ぎりぎりまで、高校に通うことにした。何かをしていないと、おかしくなってしまいそうだった。
それに、放課後彼方の家に行くのも続けていた。最後に戯さんの顔を記憶に焼き付けておきたかった。
彼方は「大丈夫か?」「告白しないのか?」と気を使ってくれていたが、とても告白なんてできなかった。ただ、彼方のその気持ちが嬉しかった。