2016年6月拍手お礼文
※時系列は愛を叫ぶよりやや前
ミヤ視点
外は雨が降っていた。
降り続く雨は一向に収まる気配はなく、外は暗い。
「泊まっていくか?」
俺が尋ねると、樹は少しだけ驚いたようだった。
録音作業をしたり、生放送をしたりするときに泊まることはあったが、基本的に樹はここに泊まることは無かった。
さすがに、初めてシタときには樹の足腰が立たなくて泊まったが、樹はあまり俺の家に泊まりたがらない様に見えた。
勿論樹には学校もあるし、彼の生活圏とあまり重なっていない俺の家は不便極まりないことも知っている。
だから、あまり無理強いしようとは思っていなかった。
樹はぽかんとこちらを見たまましばらく固まって、それからそわそわと視線を彷徨わせた。
「俺、いても、いいですか?」
ケイゴさん最近忙しそうなので。困ったように樹が笑った。
そこで初めて樹が遠慮をしていたということに気が付いた。
「いいに決まってるだろ。いつでも来ていいし、泊まっていいんだよ。」
恋人追い出すほど薄情じゃないよ。そう付け加えると樹はへにゃりと笑った。
その笑顔がとても幸せそうで、胸の奥がジワリと熱くなった。
「今日はのんびりしようか。」
年下の恋人にそう提案すると、隣に座っていた樹は今までよりもう少しだけ俺の近くによって、それから「はい」と頷いた。
直ぐに雨は止んでしまったけれど、今日は朝までずっと二人でゆっくりしていようと心に決めた。
少し開けた窓から吹き抜ける水を含んだ土の匂いを感じながらもう一度樹に笑いかけた。
了
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