愛を叫ぶ6

会議は混乱の中終了した。

明日まで、プロデューサーの出した期日だ。
ぼんやりしている時間は無いと立ち上がると橋本さんが近づいてきた。
皆気まずそうにしている中、大した度胸なのか、単にゴシップ好きなのかは分からない。

「啖呵きってかっこいーじゃん。」

と話しかけられた。
馬鹿な同僚の所為で迷惑がかかっている立場のはずなのにとても面白そうだ。

「カッコよくはないと思いますよ。
というか橋本さんいいんですか?」

チラリと他の社員の方を見た。
気まずそうにこちらを伺っている。
俺はもうやめるつもりだから仕様がないが、橋本さんは違うだろう。
そもそも今回の件に何の関係もないのだ。

「いや、別にゲイっていうの?そういうのに偏見とか無いし。それにデスマーチの連続なんだからちょっと考えればそんな暇無いって分かるじゃん。」

薄く笑いながらそう言った。事実樹と会えない事も多い勤務実態だったので複数人と付き合うのは不可能に近いだろう。

「で、なんとかなりそうなの?」
「曲の方はなんとかします。」

基本的にゲームで作った曲をアレンジして主題歌に仕立てる予定だ。
それがこの作品に合うと信じている。
問題は歌だ。

樹が歌うと言ってくれなくてはどうにもならない。

「じゃあ、とりあえずこっちでその歌い手?に連絡取ってみるから。宮本はとにかく曲を作れ。」

「で、いいですよね社長。」と橋本さんは社長の方を見た。
社長は長く息を吐いた後口を開いた。

「宮本、思った通りにやってみろ。責任は俺が取るから。」

そう言われ、正直こみあげるものがあった。
俺はジャケットの内ポケットに入れておいた辞表を社長に預けた。

橋本さんには連絡を取るのを少し待ってくれとお願いして、階段の踊り場で樹に電話をかけた。
勿論、アニメ主題歌の件でだがマナーモードにしておいたスマホを見ると会議中に一件、樹から着信があったのだ。

すぐに電話はつながった。

「ごめんなさい。俺昨日電話に出られなくて。」

開口一番樹は言った。
昨日電話に出られなかったのは考査明けの飲み会に(恐らく無理矢理)参加させられて午前様だったからのようだった。
俺にやつあたりされてしばらく距離を置いていたっていうのに何で樹が謝るんだよ。

「ごめん。」

電話口で俺が言うと、ヒュっと息をのむ音が聞こえた。

「嫌です!!……俺、ミヤさ、圭吾さんと別れたくない。」

何を勘違いしたのか樹がすがるように言う。

「俺はまだ圭吾さんからしたら子供で全然頼り無いかもしれないけど、でも、それでも俺は貴方と一緒にいたい!!」

電話越しとはいえそんな風に言われ嬉しくないはずがない。

「樹ありがとう。俺もずっと樹と一緒にいたいよ。」

と返した。

「本当ですか?」
「勿論。」
「よかったー。」

樹は気の抜けたような声で言った。ああ、俺が樹を追いつめていたのかと心底申し訳ない気持ちになった。
もう一度だけ「ごめんな。」と繰り返した。

「お仕事中ですよね?電話大丈夫ですか?」

おずおずと樹が聞いてきた。

「その事なんだけどな―――。」