真っ直ぐに見つめる21

目を覚ますとそこは見知らぬ部屋で、きょろきょろと見回しながら起き上る。
ダークブラウンで統一されたベッドと整理されて生活感があまりない棚。
あれ、俺なんでこんなところに居るんだと記憶を遡り、さっき有った事を思い出して一人赤面する。
ん?ということは、ここは小鳥遊の部屋ってこと?

もう一度部屋を見まわしていると、ドアが開いて小鳥遊が入ってきた。
いつの間にか小鳥遊は私服に着替えたらしい。
ラフなパーカーとジーパンの組み合わせだけどかっこいい。
思わずじろじろと見てしまった。

俺の視線に気が付いて「何か変か?」と言いながら自分の体を確認する小鳥遊にぶんぶんと首を横に振る。

「ゴメン。突然倒れて。何か疲れてたみたいで。」

倒れてしまった事を謝る。

「ただ寝ているだけで大丈夫そうだったから、そのまま寝かせておいた。本当に焦ったから次からはやばそうな時は言ってくれ。」

次って、次もあるってことだよね!?恋人同士になったって事でいいんだよなあ。思わず頬がゆるむ。

「何笑ってるんだ。」

と言いながら、小鳥遊はベッドに腰掛けてくる。

「幸せだなーって思って。」

素直に返と小鳥遊も口角を上げて「俺もだ。」って言ってくれて二人で笑い合った。

俺は結構寝てしまったみたいで、今はお昼過ぎ。
授業はと焦ったけど、そこは小鳥遊が上手く学校に伝えてあって俺も小鳥遊も今日は欠席ということになっているそうだ。
部活も今日は休みにしてくれたらしく、一緒に居てくれると言われニヤニヤが止まりません。

制服でいても仕方がないので、私服に着替えてお昼ご飯にする。
お昼ご飯は小鳥遊がおにぎりとお味噌汁と卵焼きを作ってくれていて一緒に食べた。
大したもの無いけどなんて言われたけど、男前な上に料理までできるなんてどこまで俺を惚れされる気だよ。

「ああ、そう言えばさっき携帯なってたぞ。」と言われポケットに入れっぱなしだった携帯を確認するとツバサちゃんが心配してメールをくれたみたいだった。
小鳥遊に断って、メールの返信をする。
文面から昨日の事は知らないようなので、その事には触れず(と言うかたぶん知らせると拓斗に締めあげられる気がするのは間違いではないと思う。)大丈夫だよとメールを打っていく。
小鳥遊に告白した事を書こうと思って手を止める。

「ねぇ、俺らって一応恋人になるんだよね?それって、周りには隠しておいた方がいい?」
「一応って何だよ。俺はきちんと付き合い始めたつもりなんだが。それから、俺は別に隠すつもりは毛頭ないが、何か隠したい理由でもあるのか?」

間髪いれずに返される。

「いや、だって俺だよ!?自分自身に対する周りの評価はきちんと理解しているつもりだけど、俺と付き合っているって、公にして小鳥遊にとっていい事って無くね?」

間違いなく、やめとけと部活関係や友人に言われるだろうし、遊びで付き合って何やってるんだと周りからの評価を落としかねないだろう。
そう思っての事だったんだけど、どうやら小鳥遊のお怒りに触れてしまったようだ。

「俺の友人で、ふざけたような付き合いを俺がするなんて思っている奴はいないし、その程度で離れていくやつなんか端から相手にするつもりはない。……俺を見くびるなよ。」

何時もより低い声でそう言われビクリとしてしまう。
俺と付き合っていることを恥ずべき事としていない小鳥遊の様子に一種の感動のようなものを覚える。

「じゃあ、みんなに俺のダーリンでーすって自慢しちゃうよー。」

そう茶化すようにしか返せない自分に少し自己嫌悪。
でも、そんなことまでお見通しという風に立ち上がって俺の方に来て髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら、くしゃって笑った。

ツバサちゃんへのメールにはしっかり小鳥遊と恋人同士になりましたと書きました。