小鳥遊の厚い胸板に顔をうずめる形になって、呼吸をするたび小鳥遊の匂いが鼻腔をくすぐっていたたまれなくなる。そっと体をよじって離れようとするが、まったくびくともしない。
たぶん、俺今全身真っ赤になっていると思う。
ふっと喉で笑う声がして小鳥遊が抱きしめる力を強める。
「何で、一々そんなにかわいいんだよ。」
そんな事を言われるが、まったく心当たりがない。
「この学園の風習には染まらないつもりだったんだがな…。」
ため息をつきながらそんな事を言われた。
「は?」
まさか、まさか、まさか、そんなことあり得ないはず!!
いや、だって、まさか。
俺がぐるぐると混乱しながらも、そろそろと顔を上げて、小鳥遊の顔を見ると小鳥遊もこちらを見ていて、視線が絡み合う。
小鳥遊は今まで見たことも無いような優しい表情を浮かべ俺を見ている。
「お前が、好きだ。」
そう囁くように言われ、全身の血が沸騰する。
でも、だってそんなのあり得ない。
「…小鳥遊、俺の事軽蔑するって言ってたじゃん。」
ぽつりと漏らすと小鳥遊は
「あの時はな…。今はお前の事が愛しくて仕様がない。」
本当に?本当に俺の事好きなの。感極まってさらに涙があふれる。
「お前は、俺の事どう思っている?」
そんなの勿論決まってる。
「俺も、好き。」
俺がそう答えると、とろけるような笑みをうかべる小鳥遊。
そのまま、抱きしめた腕を緩めると俺の顎に手を添え小鳥遊に向かう形で固定される。
されるがままになっていると、小鳥遊の顔が近付いてきて俺と小鳥遊の距離がゼロになった。
想像したより、小鳥遊の唇はやわらかくて、軽く触れるキスの後、物足りなさで思わず小鳥遊の服をギュッとつかんでしまう。
それに気が付いた小鳥遊はもう一度、唇を合わせて今度は何度も何度もついばむようにされる。
自然に俺の口元が開いてしまって、そこにヌルリと小鳥遊の舌が入り込んできた。
「ん…んふっ。」
夢中になって舌を絡めるけど、昨日からの精神的疲労と、泣き疲れが重なってそこで俺の意識はぶっつり途切れた。