真っ直ぐに見つめる14

理科室について扉をあけると、そこには一人の男子生徒が立っていた。

俺にはその人物に見覚えがあった。
同学年ということももちろんあるが、目の前の人物は確か弟の拓斗の元恋人だったはずだ。
ちょうど弟が彼と付き合っていたころ弟はいつもより少しラフな格好をしていたので覚えていた、そうまるで俺に似せたようなファッションをしていた。
何かが繋がりそうになったところで声をかけられる。

「優斗君、今日は来てくれてありがとう。」

蠱惑的な笑みを浮かべながらそう言われる。
やはり、彼が俺を呼んだようだ。

「えっと、何の用なのかな?」

そう俺から切り出す。

「えー、いきなりですかぁ。」

彼は笑顔を浮かべているのに何故か怖いと思った。
一応俺も今笑っているけど、笑顔がひきつっている自信がある。

「僕の事はご存じですかぁ?」
「確か、三井君だよね。以前拓斗と付き合っていた。」
「そぅです。知っていてくれるなんて光栄ですぅ。」

そう言った後、目の前の彼、三井君はくすくすと笑いだした。
状況が全く分からず、ポカンとしてしまう僕に笑いながら三井君は話す。

「優斗君、と、僕は、運命でぇ、付き合わないと駄目、でぇ、だからぁ、拓斗君を、優斗君にしてぇ、だけど、本当の、運命はぁ、拓斗君でぇ。優斗君と、拓斗君は、逆に、ならないとぉ。それなのに、優斗君は、あの男、に、色目を、使って、全部、台無しに、しようと、していてぇ。」

何だ、何なんだ。
間延びしているうえに、主語がいまいち分からなかったりめちゃめちゃな事を延々としゃべっている三井君に冷や汗が流れる。
それでも、良く聞いているとなんとなく言いたいことはこうじゃないかという事が分かった。

いわく、彼は俺と付き合いたかったができない事情(?)があって拓斗を代わりにしていた。だけど、拓斗とは別れた。拓斗がツバサちゃんと付き合っている様子を見て、やっぱり拓斗が良くなった。それなら、ツバサちゃんと僕が付き合って余った拓斗と三井君が付き合えばいい。でも、俺が小鳥遊に色目を使っているのでそれを止めてツバサちゃんと付き合え。
あまりのぶっ飛び理論に理解できた瞬間怒りがふつふつと湧いてくる。
拓斗に関しても、失礼だけどこんなのと付き合っていれば価値観もおかしくなるだろうと思ってしまう。

答えは簡単だ。

「ふざけんな!!」

そう言ってやった。