真っ直ぐに見つめる12

弟と放課後話をしてから数日後、朝起きて部屋の共有スペースへ行くと、そこに小鳥遊が居た。
朝は剣道部の朝練でかなり早く登校してしまっているはずの小鳥遊が居ることに少し驚く。
具合でも悪いのだろうか?心配になり小鳥遊をの顔を見ていると

「おはよう。…朝飯一緒に行くか?」

と聞かれた。
声はしっかりしているし別に具合は悪くないようだ。
じゃあなんで?

「今日部活はー?」

そう聞いてみると、どうやら顧問の都合で今日は部活が休みらしい。
朝ごはんを一緒に食べるなんて願っても無い事なので、勿論OKして、慌てて身支度を整える。
「別に急がないから慌てるな。」何て言われてしまったけど、待たせるなんて申し訳なさ過ぎてバタバタと支度をした。
食堂は起きぬけそのままですという感じの出で立ちで来る奴もまあそれなりにはいるのだけど俺はどうも自分がそうやるのが苦手なので人と合う時は大体きちんと(チャラ系の格好をしているのできちんとはおかしいかもしれないけれど)している。
と言うか、小鳥遊に起きぬけのぼさぼさの髪とか見られてしまった。よだれの跡とかはたぶん付いていなかったけれど、今更ながらに恥ずかしくなってしまった。
好きな人と同室と言うのはうれしいけど、何か恥ずかしいよ。

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連れだって、食堂へ行き朝食を受け取る。
俺も小鳥遊も和食にした。
食事の乗ったトレイを食堂のおばちゃんから受け取って適当にあいている席に着く。

小鳥遊は大体、部活の奴らと食べるからこうやって一緒に食事をすること何てほぼない。
思い返してみたけれど、同室になりたての頃何回か一緒に食べたくらいだ。

小鳥遊は真面目な方だから、食事中喋るなんてという考えかなと思っていたけれどそんなことも無く、二人でたわいもない事を話しながら食事をする。
何ていうか、幸せすぎて、自然と顔がゆるんでしまう。
ニヘラとしながら大好物の卵焼きを食べていると小鳥遊はふっと笑って自分の分の卵焼きを俺の皿に置いた。どうやら分けてくれるらしい。

「好きなんだろ?」

そう言われ、好きと言う単語に過剰反応して、赤くなってしまう。
卵の事だ、卵卵…。頭の中で呪文のように卵を繰り返す。

「卵焼き好きなんて子供みたいでしょ?はずかしいなあ。」

赤くなった顔で、ごまかすけど変だよなあ。気持ち悪がられてないかなあ。

この時、小鳥遊と一緒だということに浮かれすぎて周りが全く見えていなかった。
だから、あいつが絶対零度の視線をこちらに向けているということにも気が付けなかった。