真っ直ぐに見つめる10

島田優斗が枯れている、そう周りが認識するのに時間はかからなかった。
噂にはすぐ尾ひれがついて、俺はインポということになったらしい。
感想はと聞かれれば、正直どうでもいいよ、という一言に尽きる。

現金なもので、俺に群がっていた欲求不満な”お友達”は、俺が使えないと分かると微妙に距離を取られた。
別にそれ以外にも、友達というカテゴライズの人間は要るのでボッチと言う訳でもないし、むしろ小鳥遊を見ているのにも都合がいい。

そんな訳で今日も今日とて部活中の小鳥遊を見るために空き教室で待機している。
木曜日は走り込みもあるので、沢山姿を見ることができるため地味に気合が入っていますよ。

いつも通りその辺の椅子に座り、窓から眺めていると、後ろの引き戸がガラリと開いた。振り返るとそこに居たのは弟の拓斗だった。
一人でこんな所へ来るなんて珍しいと思いながら

「どーしたー?」

と声をかけると何も言わず、端の方に合った椅子を持ってきて俺の前に座った。
そもそも、大概の放課後は委員会かツバサちゃんと居るかの弟が何故ここにと不思議に思っていると拓斗は不意に窓の外へ視線を移す。

マジで何なんだ…。

「小鳥遊か?」

そう突然言われる。
ツバサちゃんに指摘された時のように、パニックを起こして墓穴を掘るようなことは無かった。ん?こいつツバサちゃんから聞いたのか?と一瞬思ったが、少なくともツバサちゃんが自発的に話したということは無いだろう。

「何が?…というか、今日ここに俺が居るって良くわかったねぇ。」

そうとぼけてみると弟は事もなげに「ツバサに無理矢理聞いた。」と答える。ツバサちゃんに少し同情する。というかどこまで彼に聞いたんだ。
本当に何の用で来たんだこいつ。
イラついたので睨みつけてやるが、自分と同じ顔に睨まれても怖くないよな。くそっ。

「ここで小鳥遊の事毎日みているのか?」

言われた言葉に、苛立ちと言うより、怒りに近い感情が湧く。そこまでツバサちゃんに言わせたということだ。
チッと舌打ちをした俺に弟は

「ツバサに聞いたんじゃない。…お前、ツバサに、俺と両想いのはず!!とか何とかぬかしたらしいじゃないか。お前は何故断言できた。……そう言うことだ。」

と言った。
俺が何故弟の気持ちが分かったかって、そりゃあ、双子ってこともあってかそういうベクトルの感情が分かっちゃうんだよな。理屈では上手く説明できないけど…。ということは、逆に弟も俺のそう言った感情が分かってしまうということか。異様に恥ずかしくなって真っ赤になると弟は心底、馬鹿にしたような顔をして「今更気付いたのか。」と言った。