(本編終了後 小鳥遊×優斗)
小鳥遊とお付き合いというものを始めてから、あの空き教室には行かなくなった。
小鳥遊が帰ってくれば部屋でイチャイチャさせてくれるというのも大きい。
こんなにこいつマメだったのかというくらい、甲斐甲斐しく俺の世話を焼こうとする小鳥遊に俺はどうしたらいいか分からずオタオタとうろたえてしまう。
だって、自分が相手に対して、アドバンテージを取るという事はした事があるけれど、こんな壊れ物のように慈しむという事をされた事は無い。
何というか、背中がむずむずするというか、とにかくこっぱずかしい。
だけど、今日は部活の後、メンバーと夕食後、ミーティングをするらしいので帰りが遅くなると言われた。
夜は一人か……。
そう思うと、久しぶりにあの教室に行ってみようという気になり、だらだらと弓道場を眺めている。
すると、丁度休憩時間になったのだろう、小鳥遊が道場から出てきて外にある水道で顔を洗っていた。
それを窓から見ていると、不意に小鳥遊が上を向いて、目が合った気がした。
いや、合った気では無かったようだ。
刹那、驚いたような表情をした小鳥遊だったが、直ぐに蕩ける様な笑みを浮かべた。
小鳥遊はそのまま、こちらを見ている。
見られた!!
見つかってしまった。
こんな風に隠れて見つめていた事に多分、小鳥遊は気が付いてしまっただろう。
恥ずかしいすぎる。
一応、俺も男だし、こんな女々しい事をしていたとばれた事への羞恥心と、すべてを見越してそれでもまだ、愛おしそうに見つめてくる小鳥遊の視線に一瞬で全身の血が沸騰したようになった。
真っ赤な顔をを隠すようにずるずると床に座り込む。
熱くなりすぎた体の熱を冷まそうとするが上手くいかない。
一人で悶絶していると、不意に携帯電話が鳴った。
メールの着信を知らせるその音に、気持ちを切り替えようと携帯を取り出す。
操作して中身を確認すると小鳥遊からで
【あまり、かわいい事をして俺を煽るんじゃない。
今日はなるべく早く戻るから、できれば待っていて欲しい。】
と絵文字も何もない小鳥遊らしい文面で書いてあった。
「煽るって何だよ…。」
分かるけど分かりたくないその言葉になおの事顔に熱が集まる。
待ってもらっている事はわかっている。
そろそろ年貢の納め時、覚悟を決めるべきなんだろう。
パンと自分の頬を両手でたたいて、気合を入れる。
立ち上がって、寮に戻り始める。
こんな恥ずかしいメール何かをしながらじゃないと打てやしない。
叫びそうになりながら何とかメールを書き終えて送信した。
【わかったよ(o´∀`o)
体磨き上げてまってるよぉ(はーと)】
俺の覚悟無駄にしないで欲しい。
**********************
「痛ーい。だるすぎるー。」
何とかユルイ話し方で言う。
何があったかは色々と察して欲しい。
女役は未経験だと言っているのに、限界まで追いつめてくださった小鳥遊を睨むが、本当に幸せそうに笑いかけられてしまい毒気を抜かれてしまった。
まあ、惚れた方の負けって言うしね。
負けっぱなしでも幸せと感じてしまうんだからもう仕様がないだろう。
「匠吾くーん。大好きだよー。」
めったに呼ばない小鳥遊の名前を呼んで愛を伝えた。
END