リク企画
※転校生の柚木がアンチ王道転校生だったらというIFです。
最近の諏訪野は少しおかしいと福島は思った。
言い争いをしなくなってから少しの時間が経っていた。
週に数日、食事を共にするときに視線が集まるのは相変わらずだったが、二人が並んでいても、もうざわめきはおきなくなっていた。
なぜ、諏訪野が歩み寄りを見せたのか、福島には良く分からなかった。
泣かせた罪悪感でもあったのだろうか。
泣かなければ良かったと、あれから何度も考える。
普通の従者になりたかった。
けれど、福島に方法は分からなかった。
柚木と諏訪野に呼ばれていた、転校生は時々福島の元を訪れた。
社交性もあり、見た目も美しい勝者の弁を何度も福島に聞かせたが、敗者たる福島に返せる言葉等なにもなかった。
親衛隊が気を利かせて福島を誘導することもたびたびあったが、正直に言ってもうあの柚木という人間とあまり係わり合いになりたくはなかった。
自分という人間がいかに人に好かれる素質がないということをまざまざと見せ付けられてしまうのだ。
「大丈夫ですか?」
親衛隊の副体調はもはや口癖のようになった言葉を投げかけられ、福島は申し訳なく思う。
「いつも、ありがとう。」
上手く笑えているかはわからなかったがそれでも感謝の気持ちを伝えたくて、福島は笑顔をうかべた。
それを諏訪野に見られているとは思わなかったのだ。
夕食を一緒に食べる旨の連絡が来て、指定の場所が諏訪野の自室で面食らっていたが、今度のレセプションパーティについても話があると書かれていたので断ることも出来なかった。
福島は諏訪野の部屋の前でインターフォンを押した。
中からでてきた諏訪野の機嫌は酷く悪そうだった。
まるで、そう、まるで以前の諏訪野のようだ。
「入れ。」
威圧しながらも中に入るように促す諏訪野に、なんと言って返したらよいか分からず福島は無言のまま諏訪野に従う。
そのまま案内されたのはダイニングで松花堂弁当が二つテーブルの上に並べられていた。
「座れよ。」
相変わらず諏訪野の機嫌は悪い様だった。
「いったい、なんなんですか?」
「は?」
「そのけんか腰のことですが。」
まさか気が付かないでやっているなんてことは無いだろう。福島はそう思っていたのに、不思議そうにこちらを見る諏訪野の表情を見て諏訪野が意識的にやっていないことに気が付く。
諏訪野はというと、数秒放心したように固まってそれから、大きく息を吐いた。
「小学生かよ……。」
と福島に意味が分からない事を呟いた。
「親衛隊と仲がいいのか?」
福島が椅子に座るのを待ってから諏訪野が聞く。
「うちの、ですか?
特別に仲がいいということはないと思いますが。」
「そうか。」
それだけだった。何故そんなことを聞かれたか、福島には分からなかったが。
納得した風に頷いた、諏訪野は「いただきます」といって食事に箸をつけた。
置いてきぼりになった福島は何があったのかまるで飲み込めなかったが、諏訪野は話すつもりが無いらしいので諦めて、福島も食事を取った。