それでも一緒にいたい30

昨晩はあの後も色々話した。
島田先輩は、いかにも恋人という感じで、僕に優しくて、また少し泣いてしまった。

泣き疲れて、僕は寝てしまったようだ。
朝方、起きるとそこはソファーで、テーブルに『一旦、自室に戻る』という、メモが残っていた。島田先輩の少し角ばった癖のある字に、ああ、昨日のことは夢じゃないんだと思う。

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「おはよう。」

そこかしこであいさつが聞こえる朝の登校風景。
島田先輩が買ってきてくれたパンを朝一緒に食べて僕たちも登校中です。

「あれ、優斗君と噂になってる…」
「でも、あれ弟の方じゃない?」
「えー、優斗君の後は弟、ほんと節操なしじゃない?」

こちらを見てひそひそ話す声が聞こえる。
せっかく、島田先輩の誤解が解けたというのに…、ついちらちら顔をうかがってしまう。どうしよう、どうしよう……。
パニックになりかけていたら、島田先輩が「大丈夫だから」と言って頭を撫でてくれて、赤面してしまう。
「松木かわいい」なんて言われて頭から湯気が出るんじゃないかってくらい、顔が熱くなる。

「おはよーん。ツバサちゃん。」

不意に後ろから声をかけられる。優斗先輩だ。

「なに、ナチュラルにイチャイチャしてるのー?」

なんて聞かれてあわてて島田先輩から離れようとしたけど、手を掴まれて離れられない。これって手を繋いでいるって事だよね??あれ?つい、じーっと繋いでいる手を見てしまう。

「ラブラブでうらやましいことですねー。」

と優斗先輩にからかうように言われる。
島田先輩がイライラしているのがなんとなくわかってしまって、挙動不審になってしまう。人づきあいがあまり得意でない僕はこういう時どうしたらいいか分からない。

イライラしていた島田先輩がニヤリと人の悪い笑みを浮かべて

「うらやましいだろ、だがお前にはやらん。」

と僕のこめかみの上にキスをしてきた。
島田先輩すごくかっこいいですけど、ここ外ですから!!恥ずかしすぎて、もうどうしよう。

「俺はこういうおとーとが欲しかったの、たっくんと違ってかわいい子が。
…名前も読んでもらえてないくせに。
ねーツバサちゃん、優兄ちゃんって呼んでみて。」

「え?!!」

無理です。というか弟って何!?
あわあわしていると、にやにやしながら優斗先輩が

「え、だって、たっくんと結婚したら義弟でしょツバサちゃん」

と説明してきた。
結婚という言葉の意味を頭が理解する前に島田先輩が

「拓斗って呼んでみる?」

と声を掛けられそちらに意識が行く。
じーっと見つめられて視線をそらせない。

「呼んで?」

と再度島田先輩に言われる。

「た、…拓斗先輩」

呼んだ瞬間、島田先輩はすごくうれしそうに微笑んで僕までぽーっとしてしまった。
我に返って二人で笑いあう。
こうやって二人でずっと笑ったり、泣いたり、ずっと、ずーっと一緒にいられるといいな。

予鈴がなって島田先輩と優斗先輩と3人あわてて校舎に走る。
うん、いま僕本当に幸せです。

第一章 完