ああ、やっとお客さん帰ったみたいだ。
僕は玄関のほうを振り向きながら楓に話しかけた。
「楓、あのさ、い……!!」
え?なんでここに島田先輩がいるの?
やだ。
と、とにかく逃げよう。
ソファーから立ち上がろうとしたが足がガクガクなって上手く立てないどころかふらついて転びそうになる。
転びそう?今、確かに僕は転んだと思ったんだけど…。
島田先輩にしっかりと肩を支えられていた。
「ごめん、松木。」
「あ……。」
島田先輩はまっすぐに僕の方を見て謝る。
謝るくらいならなんであんなことしたんだろう。
僕が泣きそうな顔をした所為か島田先輩は眉間にしわを寄せてものすごく苦しそうな表情をする。
その前からたくさん泣いていて顔ぐちゃぐちゃだから気にしなくていいのに。
やっぱり好きな人が辛そうなのはいやだな。
あんなことされた後だって言うのに、僕はまだ島田先輩をあきらめられそうに無い。
「今更って思われるかも知れないけど、聞いてほしいことがある。松木にとっては面白くもなんとも無い話だと思うけど…。」
島田先輩の目があまりにも真剣で僕は、嫌だということができず、こくりとうなずいた。