優斗視点
「お前、ふざけんのも大概にしろや!!」
「…っ」
殴られた口元を手で押さえながら、拓斗が俺をにらみつける。
「一人くらいって……。ツバサちゃんてとっては世界でお前一人きりなんだぞ。
お前、それ本当に分かっているのか!?」
「だから、お前が代わりに優しく慰めていたんだろ。
沢山のセフレ達で鍛えたテクニックでさあ!!」
「……お前、俺はともかくツバサちゃんまで馬鹿にしてんじゃねーよ。」
「はあ?一緒だろ。
顔が同じならどっちでもいいんだよ。
今までもそうだった。
俺はお前の代用品なんだよ。」
今までも?
何を言っている?
「前々から、てめえに相手にされないってわかった野郎がこっちにすり寄ってきてんだよ!!
で、髪型はこーしろ、こういう風にしゃべれって難癖つけて、しまいにゃ『あんたなんて、優斗君の代わりなんだから。』だ。
どうせあいつも、てめーに近づくために俺を踏み台にしただけだろう。」
「俺の所為だっていうのか?」
「……。」
「でもな、ツバサちゃん、ちゃんとおまえだって気づいていたよ。」
そんな、疑うような顔するなよ。
「あのなあ、ツバサちゃんは俺のこと絶対苗字では呼ばないよ。
誰かさんと混ざっちゃうからイヤなんだと。
お前が、部屋に行ったとき、ツバサちゃん、お前のことなんて呼んでたよ?」
拓斗はハッと気づいたように目を見開くと、廊下を走りだした。