ピンポーン
玄関のチャイムがなった。
「俺が出るから」といいながら楓が玄関に出て行った。
楓がリビングから見えなくなったところでふうーと大きくため息をつく。
とにかく混乱していておかしくなっている頭を何とかしなくてはいけない。
島田先輩はなぜ優斗先輩のふりをしていたんだろう。
小鳥遊先輩の件を知っていたのであの人が優斗先輩じゃないとわかったがそうでなければ優斗先輩だと思っていただろう。
優斗先輩の評判を落としたいということかな?
でも、なぜわざわざ僕なんだろう。
なぜ、島田先輩が僕にあんなことをする必要があったんだろう。
何度考えても答えが出ない。
自分の思考に集中してしまった。
楓はまだ戻ってきていないみたいだ。
玄関の方から争っているような声が聞こえる。
何かあったんだろうか。
「あんた、どの面さげてここに戻ってきたんだよ!」
「えっと何か俺したっけ??」
「はあ?!ふざけんのも大概にしろや。」
「何を怒っているのか分からないけど、とりあえずツバサちゃんに合わせてもらえないかな?」
「あんなことしておいて会わせられる訳ないだろうが。」
「だから、何か勘違いしてない。俺心当たり全然無いんだけど。」
楓と優斗先輩と思われる声が言い争っている。
楓もあれは優斗先輩だと思ったんだ。
優斗先輩が困っている。
僕はふらふらと玄関に出て行った。
僕が玄関に来たことに優斗先輩が気付いて話しかける。
「ツバサちゃーん。何かお友達が勘違いしているみたいで。
って、あれ??何か具合悪い?」
「っつーかお前の所為だろうが。」
「……ちがっ。」
「ツバサ無理しなくていいから部屋戻ってな。俺が追い出すから。」
どうしよう。無関係な優斗先輩に迷惑がかかってしまう。
「違う。島田先輩が……。」
「だから、こいつがお前を襲ったんだろう。今追い出すところだからツバサは戻ってな。」
「襲ったって!!」
困って、楓と優斗先輩を交互に見る。
何とか、何とかしないと。
「楓、違うんだ。優斗先輩じゃない。」
「はあ?何言っているんだ。今更優斗先輩かばっても何にもならないだろ?」
「違う。島田先輩が…。」
「……?」
楓もすっかり困ってしまったところで優斗先輩が口を開いた。
「ツバサちゃんは僕のことを島田先輩と呼ぶことは無い。
……島田先輩と呼ぶのは」
「弟の拓斗だけだ。」