「あー、ごめん。……お取り込み中でしたね。」
違う。お取り込み中じゃない。
島田先輩が楓をにらみ付ける。
「…ちが、ヤダ…。」
恥ずかしいのと混乱とで涙が流れる。
どうしよう、楓に勘違いされている。
「か、え…で、助けて。」
部屋を出て行こうとしている楓に助けを求める。
「へ??えっと、合意じゃないん…でしょうか?」
変な顔をしながら楓が尋ねる。
でも上手く声が出せなくて「ちが」とか「や」とか意味を成さない言葉しか出ない。
楓が島田先輩のほうを見ると先輩は「チッ」と舌を鳴らして僕から離れて部屋を出て行った。
僕のほうは一切見なかった。
「ツバサ、大丈夫か?」
楓が優しく話しかけてくる。
今更ながら、体がガタガタと震えていることに気がつく。
「…………。」
「とりあえず体拭こうか?」
そうだった。ズボンがずり下がったままだった。
恥ずかしい。
別に男同士だから気にすること無いのかもしれないけど、汚れているし。
あわてて近くにあったティッシュで拭いてズボンを上げる。
「何であんなことになったんだ?良かったら聞かせて?」
楓にいわれて改めて今あったことを思い出す。
島田先輩のことは好きだ。でも、怖かった。
島田先輩が何を考えてあんなことをしたのかわからなくって怖かった。
次々と涙があふれ出る。
「ふ……。うぇっ。」
嗚咽を漏らしながら泣いてしまった。
島田先輩に振られた時と同じように楓は何も聞かずただ僕のそばにいてくれた。