目を覚ますとそこは全く見覚えの無い場所だった。
俺は何故かベッドの上で寝ていた。
とりあえず起き上がろうとすると、ズキリと体が痛む。
それで、何故こんなに腹が痛むのかを思い出した。
明らかに堅気ではないおっさんに殴られて、恐らくここへ連れてこられたんだろう。
そっと首だけ動かして周りの様子を確認する。
どうやらホテルの一室らしいその部屋は、間接照明の所為か薄暗い。
なんだってこんなことになってしまったのか皆目見当もつかない。
泥棒だっていうのであればわざわざこんなところに連れてくる必要なんてないはずだ。
最悪の想像が脳裏をかすめ、冷や汗が出た。
とにかく、とてもじゃないが良い状態なんて事は無い。
とにかくこの状況を脱するしかないのだ。
痛む体を無視して無理やり起き上がる。
幸いなのかどうなのか分からないが、靴は履いたままだったのでベッドから降りようとしていると、入口のドアが開いた。
一体誰が入ってくるのかと体を硬くすると、胡散臭い笑顔を貼り付けた男が入ってきた。
その後ろに先ほど俺を殴った男もいた。
「おやおや、起きたのなら丁度いい。間もなくスペシャルゲストが到着しますよ。」
胡散臭い方の男がそう俺に話しかけた。
スペシャルゲスト?何を言っているんだこいつは。
すると、いかつい男から携帯の着信音がした。
電話に出る男を仕方がなく眺めていると、そいつはドアの方へと向かった。
開いたドアの先から入ってきた人物に俺は目を見開いた。
なぜなら、入ってきたのは俺の同居人であるあの馬鹿野郎だったのだから。