※文化祭編続き
「さてと、お仕置きだよ、とか言ったほうがいい?」
小西先輩の部屋に入って、寝室で俺に覆いかぶさったあの人は、俺の顔を見下ろしながら言った。
「正直、無いですよね。」
まるで、エロ漫画の世界だ。普通はそんな事言わない。
「うーん。でも“正直”そういう気分なんだよね。」
あの人を信じないで勝手に諦めた俺に対して、小西先輩が怒っている事は理解している。
けれど見上げた顔に怒りも嫌悪も見て取れない。
むしろ、面白そうに俺のことを見下ろしていた。
「俊介はどうすれば甘えてくれるんだろうね。」
そういうと、キスをした。
触れた唇はかさついていて、小西先輩が疲れているのだといやでも分かる。
休んだ方がいいんじゃないかと思う。
押しのけようとしたあの人の体はびくともしない。
「諦めて素直に抱かれて?」
一瞬質問かと錯覚したが、完全にそう決めて言っている言葉に休んでくださいとは言えなくなる。
手際よく、シャツのボタンがはずされていく。
中にきていたタンクトップをめくり上げて、いきなり、乳首を口にくわえられた。
思わず息を飲むと、その反応がお気に召したのか、舌で嘗め回されて身悶える。
そのとき、足が、あの人の下肢に触れた。
そこはすでに張り詰めていて、思わずそちらに視線を向けた。
小西先輩は、困ったみたいな笑顔を浮かべばつが悪そうだった。
「疲れマラってやつだから、気にしないでね。」
そう言って、小西先輩は俊介はこっちに集中しようなと首に舌を這わせる。
そのまま、胸に唇を落とすと、チクリと痺れにも似た痛みが走る。
唇を離したあの人は、それから色が変わったそこをそっと撫でた。
その様子がとても楽しそうで、それでいて愛おしそうで、とても羨ましくなった。
愛おしく見られてるのが自分の肌だっていう事は分かっていた、けれどもそれが気恥ずかしいより最初思った事は、羨ましいだった。
力任せに小西先輩に手を伸ばすと、抱きしめるみたいにして引き寄せた。
それから、彼の首元に唇をつけた。
その場所が、服を着ても見えてしまう場所だと一瞬頭の中をよぎっても、それでもやめる気持ちにはならなかった。
あの人が自分のものだと主張したい気持ちはそれほどなかった。
だから、多分これは甘えなのだと思う。
小西先輩は首に跡が残っても、多分適当に取り繕うだろう。
ただ、俺が、俺だけが知っている印として、そこにあって、それを許されている事実が欲しいのだ。
キスマークをつけたことはなかった。
吸えばいいということだけは知っていたが、いかんせん人の肉に傷をつけることに戸惑いがあって、上手くできない。
ただ、ふにふにと首筋の肉を食むだけでになってしまう。
クスクスという笑い声が聞こえる。
「俊介は、本当に可愛いなあ。」
別に俺は可愛くはない。それは自分自身が一番よく知っている。
だけど、そう思ってる事まで恐らくお見通しなあの人は、それから、跡つけてもいいよと甘やかな声で言った。
あの人の見よう見まねでやった印は、思ったより小さくて赤い。
それでも、これを許してくれるあの人が嬉しくて、ただひたすら愛おしくてそっとその印に舌を這わせた。
ゴクリ、あの人の唾を飲み込む音が聞こえた。
そのまま、腕を縫いとめられ、呼吸まで飲み込まれるんじゃないかと思うくらいの口付けをされる。
「ふぁっ、んぅッ。」
鼻から抜ける声が媚びているようだ。
小西先輩は無言でガチャガチャとベルトをはずすと一気に身に着けてるものを剥がされる。
見上げたあの人の顔は、こういう時にだけ見せるぎらぎらとした男の顔で、今この顔を見る事ができるのが自分だけだという事が幸せだった。
その顔を見ると、すべて差し出してしまいたくなる。
体を拓かれる事はいまだになれない。
れけど、それは酷く当たり前で、自分自身が望んでいる事だと知っている。
余裕のなさそうなあの人が、すでに勃ち上がりきった切っ先を当てる。
ゴメン、と謝られる前に「もう、入れてください。」と懇願する。
「ぁ、あぁッ、アッ、あぅっ―――」
久しぶりの行為に、目の前が真っ白になる。
痛みは伴っていたが、一番近い部分であの人の熱を感じられて馬鹿みたいに嬉しかった。幸せだった。
少しだけ上ずった声で「動くから」と言われて首に腕を回した。
目に入ったのは先ほど付けた印で、もう一度そこに口付けをする。
あの人は最初から余裕のない腰使いで、悲鳴のような喘ぎをあげることしかできなかった。
ごつごつと骨同士が当たる音がする。
一番深い部分までむさぼられている気分になった。
「ひァッ…、あ、ッん、うぁッ。」
気持ちよくて、熱くて、目の前の人のことしか考えられない。
キスをしたくて半開きになった口で顔を近づけると、噛み付かれる様にキスをされる。
舌の根元を滅茶苦茶に舐められて、思わず背中に回した手が爪を立てる。
そんな事に気がつけない位、もう目の前にいる男とこの行為に頭がいっぱいだった。
チカチカと目の前がスパークする。
中のあの人のものが一回り膨張した気がして、それから弾けた。
じわりと中に広がる熱に、小西先輩が達した事を知り、ほぼ同時に自分も白濁を吐き出していた事に気がつく。
ゆらり、と天井がゆがんでそれから、目の前が暗転した。
◆
次に目覚めた時には体は綺麗に清められていて、申し訳なさそうにこちらを見る。
その顔があんまりにも、しょげていて、思わず吹き出してしまった。
「気持ち良すぎただけですよ。」
普段、睦言でも言わない台詞がするりと出た。
事実ではあるのだけれど、恥ずかしさは勿論ある。
いたたまれなさ過ぎて、思わず毛布をかぶった。
隣で、息を吐くだけの静かな笑い声が聞こえた。
了
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お題:甘々、甘える俊介(R18)